「遺言書を書いた方が良い」とは聞くけど、なかなか取りかかれないという方も多いのではないでしょうか。
遺言書を書くことを先延ばしにしてしまうのは、次のような理由が多いと思います。
- 「書き方がわからない」
- 「遺言書なんて当然書いたこともないし、難しそう」
- 「準備や書くのに時間がかかりそう」
- 「弁護士や司法書士などの専門家に頼むと、費用が高そう」
- 「まだ若いし、自分には遺言書を書くのは早い気がする」
- 「書いた後、保管に困る」
遺言書なんてなかなか馴染みもないと思いますし、不安や疑問があるのは当然です。
私も自分の仕事以外のことは全然わかりません(遺言書は仕事で扱っているので詳しいですよ)。
この記事を読めば、すぐに遺言書が書ける、一番簡単で正しい遺言書の書き方がわかります。
具体的には、かかる時間は1分間ほど。費用も1円もかけずに遺言書が作成できます(お手元に便箋やコピー用紙がなければ、紙代ぐらいはかかります)。
この書き方なら「私にもすぐできそう」「とりあえず書いてみよう」と思っていただけると思います。
私は司法書士・行政書士・土地家屋調査士・宅地建物取引士の資格を持つ、相続や不動産の手続の専門家です。
ショウ先生という名前でこのブログを運営していますが、本名は永田翔と申します。
事務所は神奈川県藤沢市、いわゆる湘南地域にありますが全国どちらでも対応可能です。
実際に北海道や沖縄県にもお客様がいらっしゃいます。
自筆証書遺言書は、すべて手書きで書く必要があります。
一番シンプルな書き方。つまり一番書く量が少ないひな形をお教えしますね。
目次
一番簡単で、かつ正しい(有効な)遺言書の書き方
「簡単」と「正しい」に分けて説明していきますね
一番簡単な遺言書の書き方
一番簡単つまりシンプルな遺言書は、「全財産を誰々に相続させる」という内容のものになります。
あげたい相手が民法上の相続人でない場合は、厳密にいえば「相続させる」ではなく「遺贈する」となるのですが、「相続させる」と書いても有効ではあります(例えば、いわゆる内縁の妻などは、原則として民法上の相続人ではありません)。
長男永田太郎に私が有する一切の財産を相続させます。 令和4年5月9日 永田翔 「印」
「〇〇(相続させたい方)に私が有する一切の財産を相続させます。」と書きます。
配偶者やお子様であれば、続柄と名前だけで特定できます。
「よくしてくれた方や団体にあげたい」という方もいらっしゃいます。
その場合は、住所とお名前を書いて、特定しましょう。
あとは作成日と名前を書いて、印鑑を押せば完成です。
内容的にはこれだけで有効です。すぐにかけますよね?
「印」の部分には印鑑を押してください。
認印でも良いですが、実印を押して、「印鑑証明書」と一緒に保管する方などもいらっしゃいます。
他人が勝手に書いたものではないという、証拠の一つにはなると思います。
先ほどのものは最低限の要件を満たしてはおりますが、できればこのような形だと、より良いと思います。
遺言書 長男永田太郎に私が有する一切の財産を相続させます。 令和4年5月9日 神奈川県藤沢市湘南台1-2-3 永田翔 「印」
上のものに、タイトルの「遺言書」と「自分の住所」を加筆しました。
「遺言書」とタイトルを入れました。
入れないといけないわけではありませんが、入れるとそれっぽくなりますよね(笑)?
また氏名の上に住所を入れました。
万が一といった程度の話ですが、同姓同名の別人だと思われないために、ご住所も書いておくとより良いですね。
正しい遺言書の書き方
「正しい」とは言っても内容(遺産の分け方)は遺言書を書く方の自由です。
ですから、ここでの「正しい」は「有効な(=無効にならない)」という意味だと思ってください。
- 全文を自筆で書く
- 作成した日付を書く
- 署名をする
- 印鑑を押す
順番に解説していきますね。
全文を自筆で書く
「自筆証書遺言」というだけあって、自筆で全文を書かないといけません。
ですので、何らかの事情で自筆が難しい場合は、公正証書遺言によることになると思います。
筆記用具には特に決まりはありません。
鉛筆やフリクション(擦ると消えるインクを使ったボールペン)を使っても無効ではありません。
しかし、相続発生時まで文字が読み取れる状態で保管ができないと意味がないので、万年筆や普通のボールペンを使用することが望ましいでしょう。
余談ですが、擦ると消えるボールペンは、摩擦による熱で消えるそうです。
そのため擦らなくても、真夏の車内など高温となる場所に放置すれば、文字が消えてしまうそうです。
作成した日付を書く
令和4年5月9日といった感じで、作成日を記入してください。
「令和4年5月吉日」といった記載では無効になります。
理由は、遺言書は実は何度でも書きなおせるのですが、内容の異なる遺言書がある場合は後から書かれたものが有効となるためです。
「5月吉日」といった書き方では、作成された正確な日付がわからないという理屈ですね。
署名をする
住民票・戸籍などに記載されている氏名で正確に記載してください。
ペンネームや芸名などが広く認知されている方であれば、必ずしも本名でなくても良いとされていますが、本名で記載された方が無難だとは思います。
私は「ショウ先生」という名前でブログを書いておりますが、この名前で遺言書を書いても、家族にさえ伝わらなさそうですね。
ひとまず本名の永田翔で遺言書を作成しております(笑)。
印鑑を押す
ご実印である必要はありません。
認印でも良いですし、拇印(指印)でも良いとされています。
遺言書を作成するのにお金はかかる?
自筆証書遺言をご自分で書かれるのであれば、費用は一円もかかりません。
「そうはいっても、専門家にチェックしてもらわないと不安だよ。」という方はお気軽にご連絡ください。
記事公開からしばらくの間、無料で遺言書のチェックをさせていただきたいと思います。
※業務に支障をきたす量になった場合は、無料での遺言書チェックを終了いたします。
有償化の際は、こちらの記載を変更させていただきますので、ここに無料と書かれている間は無償で対応していると思っていただいて大丈夫です。
自分には遺言書は早いのでは?
「簡単に無料で遺言書が書けるのはわかった。でも自分にはまだ早いよ。」
そう思う方も多いと思います。
しかし、遺言書は何度でも書きなおせるものですし、とりあえず簡単なものを作っておくということをオススメしたいです。
遺言書がないと、相続人全員が手続きに関与することが必要となります。
いざというときに残された方が大変になっている状況を、何度となく目にしてきました。
例えば、お子さんがいないご夫婦などは、お互いに全財産を相続させるという遺言書を書くことをオススメしたいです。
そうでなければ、残された配偶者は、貴方のご両親と遺産分割協議書を作成しなくてはいけなくなります。
万が一、そのときにご両親の片方でも認知症になっていれば、手続は非常に複雑になっていきます。
具体的には、成年後見制度を利用して家庭裁判所で、ご両親の代理人を選任することになったりします(この代理人を成年後見人と言います。判断力等がなくなってしまった方は、有効に委任契約をすることなどもできないので、家庭裁判所が代理人を選ぶという制度です)。
参考までに、ご自身で相続登記をする場合の必要書類等について解説した記事はこちらです。
亡くなった後、遺言書はどのように使われるのか
遺言書を使ってもらえるように、伝えておこう
せっかく遺言書を作っても、誰もその存在に気づかないと意味がありません。
どなたか信用のできる方に預けておくか、金庫に入れておくなどして、自分が亡くなった際にはその遺言書を見てもらえるようにしておきましょう。
- 「遺言書を書いて、〇〇さんに預けてあるから、自分が死んだら連絡しろ」と伝える。
- 「貸金庫の中に遺言書があるから、自分が死んだら、それに従って手続をしろ」と伝える。
- 「これ遺言書、何かあったときのために預けておくね」と相続人の中で一番信頼できる人に預かる。
などといった方法が考えられます。
中身をみられると困るとか、内容を改ざんされると困るとか、勝手に捨てられると困るとか、色々な不安があると思います。
せっかく書いた遺言書ですから、ちゃんと実現されるよう、保管方法には気をつけたいですね。
家庭裁判所での検認
自筆証書による遺言書は、家庭裁判所で「検認」という手続を経ないと、相続手続に使用することはできません。
遺言書を保管していた方か、相続人のどなたかからすることができます。
家庭裁判所に検認の申し立てをすると、申し立てをした人と裁判所の都合で、検認の期日(検認をする日)が決まります。
相続人全員に「この日に裁判所で検認をしますよ」という手紙が送られます。
出席したい人だけが出席すれば良いです。申し立てをした人は、遺言書を持参する必要がありますが、他の方は欠席をしても、手続に支障ありません。
検認というのは、裁判所で「このような遺言書があり、検認の日には相続人のうちこの人がきて、このような意見を言っていた」というような記録をつける手続です。
遺言書が有効か無効かを判断するような手続ではありませんので、検認を受けたところで、要件を満たしていなければ無効です。
私は遺言書の保管者として、検認に立ち会ったことが何度もあります。
裁判官と書記官がいる部屋に通され、「亡くなられた方の筆跡に間違いなさそうですか?」といった質問がされたりします。
相続人の皆さんが「最近、親父の書いた字なんて見てないからわからないな」とおっしゃったケースもありましたが、それでも検認は問題なく終わります(笑)。
検認された遺言書を使った、相続手続
前述のとおり、遺言書がないと相続人全員での遺産分割協議が必要となります。
遺言書があれば、それを持って他の相続人の同意などなく、相続手続が可能となります。
ただし遺留分と呼ばれる権利があるので、他の相続人からはそれについての請求はあるかもしれません。
法律上相続する権利があった方には、遺留分という権利が認められます。
例えば「ワシは長男に全財産を相続させる!」という遺言書があったとしても、奥様や他のお子さんには、遺留分という権利があります。
この権利を使うと、本来の相続分の半分まで、長男から財産を返してもらうことができます。
しかし遺言書がなければ、自分の法定相続分以上の権利を主張することはできません。
遺言書があった方が、ご自身が財産をあげたい方の立場が有利になるのです。
書いた後、保管に困る
貸金庫を借りていたり、信頼できる親族や知人に預けられる方は良いですが、誰しもがそのような保管方法を準備できるわけではありません。
そのような方のために法務局で遺言書を保管してくれる制度もできました。3900円で利用できます。
なおこの制度を利用する場合、上に書いた、家庭裁判所での検認も不要となります。
まとめ
まとめます。
- シンプルな内容のものであれば書き方はすごく簡単なので、この記事を参考にしてください。
- この記事の例文と同じような内容であれば、1分程度で書けると思います。
- 専門家に頼らず自分で書けば費用は無料。期間限定で当事務所で無料の遺言書チェックをやってます。
- 遺言書は何度でも書きなおせるので、早いうちからとりあえず書いておくことをオススメ。
- 保管できる場所も、預けられる人のあてもなければ、3900円で法務局が保管してくれます。
記事を読んで下さった方で、ご依頼・ご相談・ご質問などあれば、コメント欄・お問い合わせページ・TwitterのDMなどで気軽に連絡くださいね!
湘南の不動産・相続手続の専門家、ショウ先生こと永田翔でした。