親御さんやご親族が亡くなられた際は、葬儀・四十九日などと、辛いお気持ちの中で慌ただしく過ごされる方が多いのではないかと思います。
そのような中で「相続」「遺産分割」など、日常生活で馴染みの少ない手続きが必要となり、「何からはじめれば良いのか?」「専門家に頼むとして、誰に相談すれば良いのか?」とお困りになられているのではないでしょうか。
「相続手続き」と言っても、次のように様々なものがあり、実は手続きごとに相談をすべき(相談できる)専門家は異なっています。
「縦割り行政の弊害」と言ったりしますが、相続の手続きでもそれを実感します。
- 不動産の名義変更→手続きを行う場所「法務局」→司法書士・土地家屋調査士
- 自動車の名義変更→手続きを行う場所「陸運局」など→行政書士
- 預貯金の解約など銀行での手続き→弁護士・司法書士・行政書士
- 株式や投資信託の名義変更・解約など証券会社での手続き→弁護士・司法書士・行政書士
- 大型の船舶の名義変更→海事代理士
- 相続税→手続きを行う場所「税務署」→税理士
- 相続人間で争いがある→手続きを行う場所「裁判所」→弁護士
- 年金手続き→手続きを行う場所「年金事務所」→社会保険労務士
- 相続財産の放棄をしたい→手続きを行う場所「家庭裁判所」→弁護士・司法書士
この記事を読んでいただければ、相続手続きについて、誰に相談すれば良いのかがおわかりいただけると思います。
この記事を読んでいただいて、まだわからないことがあるという方は、お気軽にお問い合わせください。
私は司法書士・行政書士・土地家屋調査士・宅地建物取引士の資格を持つ、相続と不動産に関する手続の専門家です。
ショウ先生という名前でこのブログを運営していますが、本名は永田翔と申します。
事務所は神奈川県藤沢市、いわゆる湘南地域にありますが全国どちらでも対応可能です。
実際に北海道や沖縄県にもお客様がいらっしゃいます。
目次
誰に相続手続きを依頼すれば良いのか?
大きくわけると次の3つに分けられると思います。
- 銀行・信託銀行など
- それ以外の民間の相続手続き代行業者
- 専門家(弁護士・税理士などの有資格者)に依頼する。
結論から言うと、私のオススメは専門家に依頼することです。
検討のため、それぞれメリット・デメリットを比較していきましょう。
銀行・信託銀行に相続手続きを依頼する。
メリット:手間が抑えられる・高い安心感が得られる
デメリット:費用が高額になりがち
銀行・信託銀行に相続の手続きを依頼しても、多くの手続きについては、銀行・信託銀行が手続きを代行できるわけではありません。
銀行・信託銀行(以下、「銀行等」とします)の中には、相続手続き・遺産承継業務などをサービスとして行っているところがあります。
例えば、千葉銀行さんのWebサイトを見ると、次のようなページがあります。
ちばぎんブログ:相続手続きって何から始めればいいの?手続きの流れを詳しく解説
このページ内で相続手続きの紹介をしてくれているのですが、その中には銀行等が代理で行うことができない手続きも多くあります。
そのため銀行等に相続手続き・遺産承継業務を依頼すると、銀行等が代理でできない手続きについては、それぞれ銀行が付き合いのある専門家(弁護士・税理士等)を紹介してくれることになります。
どの手続きをどの専門家ができるかは、後ほどご説明いたします。
銀行等に依頼すれば、必要な手続きを判断して、専門家を手配・紹介してくれます。
そのため、自分で必要な手続きを考えて、各専門家にあたるという手間がなくなります。
また、銀行等がお客様に専門家を紹介した場合、銀行等の信用問題にもなるので、ちゃんとしている(と銀行等が考えている)専門家の方を紹介してくれるはず。
そのため、専門家選びに失敗をする可能性が低く、安心して依頼できることがメリットです。
その代わり、銀行等を通して依頼することで、銀行の手数料・料金が発生いたします。
そのため、各専門家に直接依頼する場合に比べて、トータルでの費用が高くつくのがデメリットです。
そしてこの料金が決して安くはない(むしろ私のような庶民の感覚からすると高い)のです。
千葉銀行さんは税込み110万円~と書いてますが、これは他行と比べても相場程度です。
しかし銀行等も当然ながら人件費などがかかっていますから、そこは仕方ないですね。
民間の相続手続き代行業者に依頼する
メリット:銀行等に依頼した場合と同じく楽・それでいて銀行等よりは費用は抑えられることが多い
デメリット:銀行等に比べると安心できない可能性もある
民間の相続手続き代行業者は、正直なところ玉石混交なイメージです。
サービス内容としては、基本的には銀行等と同じく、必要な手続きを判断して弁護士・税理士等の専門家を手配・紹介してくれることになるはずです。
相続を専門に扱っているわけですから、銀行等の方よりは相続手続きに詳しい可能性も高いと思います。
代表者やオーナーが、士業の資格者であることも少なくありません。そのような業者であれば、代表者の専門分野については専門家としての知見も持っているはずです。
こういった会社に依頼した場合のメリットは、銀行に依頼した場合とほぼ同様です。
専門家選びに失敗したり、手続き漏れが発生するリスクを回避することができます。
また費用については、銀行等に比べるとリーズナブルな料金体系の業者さんが多いと思います。
デメリットとしては、民間企業ですので玉石混交なところはあります。
銀行等のように設立に厳しい要件があったり、歴史がある会社・法人ばかりではありません。
そのため銀行等ほどは信用できない可能性もあります。
良心的な価格で、サービス・対応もしっかりしている業者ももちろんあります。
評判が良い会社、業歴の長い会社を探すなど、良い業者を探すことが探すことができればメリットを感じることができるかもしれません。
専門家に相続手続きを依頼する
メリット:費用が抑えられる
デメリット:依頼する士業の事務所によって、実務能力や対応の良し悪しが大きく異なる。専門外の手続きについてのフォローや紹介をしてくれない事務所の場合は面倒。
例えば、司法書士業務にあたる、不動産の名義変更(相続による所有権移転登記)手続だけが必要だとしましょう。
この場合でも、銀行等や民間の相続手続き代行業者を通すと、司法書士の報酬・実費のほか、銀行等や相続手続き代行業者の料金が別途かかります。
しかし司法書士に直接依頼すれば、その報酬・実費だけで済みます。
ただ直接依頼する場合、その事務所の対応力などには当然ながら差があります。
銀行等や民間の相続手続き代行業者は、士業の方に仕事を紹介して、対応がイマイチであれば他の事務所を探すはずです。
ですから、紹介してもらった士業の方の方が、ハズレを引く可能性は低いです。
また様々な手続きが必要となる場合、それぞれの手続きについて、自分で士業に当たらなくてはいけないかもしれません。
「そもそもどのような手続きが必要かわからない」といった場合、手続き漏れが生じるリスクもあります。
しかし、最初に何かの手続きを頼んだ士業の方が、ご自身の人脈から適任と思われる方を次々に紹介してくれることもあります。
この場合は結果的に、銀行等や民間の相続手続き代行業者がやっているような、士業の手配・紹介のサービスを受けられたのと同じような結果になります。
民間の相続手続き代行業者に依頼するときと同様に(それ以上に?)、良い士業の先生に依頼できるかどうかで、満足度が大きく変わるところです。
オススメの依頼先をまとめると次のようになります。
- 費用を抑えたい方は弁護士・税理士などの専門家から、必要な手続きを受任できる方に相談
- 手間を抑えたい場合は、民間の相続手続き代行業者に相談
- 多少費用がかかっても、手間を抑えて、安心感を得たい場合は銀行に相談
専門家に直接依頼をされる方のために、どの資格を持っている人が、どのような手続きをできるのかについては、この後の部分でご説明しますね。
どの専門家に依頼をすべきか
私が相続手続きについて専門家に依頼する場合、次のようなフローチャートで考えると思います。
- 親族間で揉めている、または揉める可能性が高い→弁護士に相談
- 相続税の申告が必要→税理士に相談
- 不動産がある場合→司法書士に相談
- 大きい土地を分けて相続する・登記簿がない建物がある→土地家屋調査士の関与も必要
※司法書士と土地家屋調査士の両方の資格を持っている方か、両方の資格者がいる合同事務所のようなところでの相談がオススメ - 会社の役員変更等が必要な場合→司法書士に相談
- 自動車の名義変更がある場合→行政書士に相談
※不動産と自動車の両方がある場合、どちらの手続きを優先するかによって、司法書士または行政書士のどちらかに相談するかを決めると良いでしょう。
両方の資格を持っている方か、両方の資格者がいる合同事務所に相談できれば、より安心です - 不動産・自動車がなく、預貯金・株式等の解約・名義変更のみを検討している。
弁護士・司法書士・行政書士の中からお好みで選んで問題ないと思います。 - 年金関係の手続きがある場合→社会保険労務士に相談
- 船の名義変更がある場合→海事代理士に相談
- 特許などをお持ちの場合→弁理士に相談
業務経験が豊富で、それなりに親切な先生であれば、ご自身の専門外の分野についても他の専門家を紹介してくれます。
初回相談が無料の事務所も多いので、まずは一度相談してみて、「実務経験が豊富そうか」「その先生の専門外のことを訊いたときはどのような反応をしたか。
「専門外なので、自分で役所や専門家に訊いてほしい」という専門家は、不親切か人脈がないかもしれません。
「専門外ですが、信頼できる専門家をご紹介できますよ」と言ってくれたり、「親しい方に確認してからお伝えしますね」と言ってくれる方に依頼できると良いですね。
なお当事務所(司法書士・行政書士・土地家屋調査士として登録・開業しております)も初回の相談は無料です。
弁護士さんに依頼すべき相続手続き
弁護士さんといえば、裁判所を利用した訴訟や調停といった手続き。
相続人間で話し合いがまとまらない場合、遺産分割協議書が作成できません。
そのため裁判所を通して、調停を行った調書・裁判をした判決正本が、遺産分割協議書の代わりになります。
話し合いができない可能性が高いようでしたら、最初から弁護士さんに相談された方が良いかもしれません。
税理士さんに依頼すべき相続手続き
税理士さんといえば、その名のとおり税金関係の手続きが専門。
相続税がかかる場合や、何かしらの申告が必要な場合は、税理士さんに相談すべきです。
かかるかどうかが不安という場合も、相談した方が安心でしょう。
なお相続税がかかるかどうかは相続人の人数によります。
「3000万円+600万円×相続人の数」で計算した金額が、相続財産以上であれば、何の手続きもしなくても相続税はかかりません。
例えば相続人がご自身だけであれば、3000+600で3600万円まで、相続人がご自身を含めて3人であれば、3000+600×3=4800万円までの相続財産であれば、相続税がかかりません。
不動産(土地・建物)の名義変更・会社等法人の役員変更が必要な場合は司法書士さん
私が持っている資格の一つでもある司法書士。
司法書士は不動産の権利関係や、会社などの法人に関して、法務局での登記を行うことが専門分野です。
よく「土地(建物)の名義変更」と言ったりしますが、これは「相続による所有権移転登記」という手続です。
司法書士と弁護士が受任できる手続きですが、弁護士さんは専門外にしている方が多いです。
会社の役員変更などの手続きは、「法人登記」と言います。
同じ「登記」という言葉が入っていますが、不動産の名義変更と同じく「法務局」というところで行う手続きで、やはり司法書士の専門分野です。
不動産の手続内容によっては、土地家屋調査士さんの出番も
上記のとおり、一般的な不動産手続きであれば、司法書士の専門分野です。
しかし、「大きな土地を区分けして、それぞれを単独所有にしたい」「相続財産の中に登記されていない建物がある」など、やや特殊なケースでは、土地家屋調査士さんの関与も必要となります。
できれば司法書士・土地家屋調査士の両方がいる事務所や、両方の資格を持っている人がやっている事務所への相談がオススメです。
手前味噌ではありますが、私も司法書士と土地家屋調査士の両方の資格を持っております。
手続きが複雑になりそうな場合などは、ぜひ私にご相談ください。
自動車の名義変更は行政書士さん
行政書士さんは様々な手続きができるのですが、一般的なご家庭でよくある手続きとしては、自動車の名義変更などは行政書士さんの専門分野です。
不動産と自動車の名義変更を頼みたい場合は、司法書士・行政書士、両方の資格者がいる事務所を探しましょう。
不動産の優先順位が高ければ司法書士、自動車の優先順位が高ければ行政書士という形でも良いかもしれません。
私も司法書士と行政書士の両方の資格を持っております。
預貯金や株式についての、解約・名義変更だけの場合は?
弁護士・司法書士・行政書士の中からお好みでご依頼いただいて問題ないと思います。
年金関係の手続きが必要な場合は社会保険労務士さん
社会保険労務士さん(社労士と略されることも多いです)は、年金関係の手続きを専門としています。
年金関係の手続きが必要であれば、社会保険労務士さんにご相談ください。
とはいえ、年金の手続きしかないというのも、レアケースのような気がします。
弁護士・税理士・司法書士・行政書士といった資格者の方が、相続を専門にしている方が多い印象ではあるので、そういった方からご紹介いただくのも良いでしょう。
船の名義変更は海事代理士さん
海事代理士さんは、船舶の名義変更などを扱う専門家です。
少しややこしいのですが、大型の船について行う船舶登記は、司法書士も受任できるとされています。
ただし小型の船について行う船舶登録については、海事代理士さんしかできないとも言われています。
ご自身が相続した船について、どちらの手続きが必要かわからない場合などは、まずは海事代理士さんにご相談いただいた方が無難かもしれません。
亡くなられた方が特許などをお持ちであった場合は弁理士さんに相談
弁理士さんは特許・著作権など、知的財産権(知財と略することもあります)の専門家です。
亡くなられた方がそういった財産をお持ちの場合は、弁理士さんにご相談されることをオススメいたします。
これまでに書いた他の手続きも必要な場合、依頼した専門家の方から、弁理士さんをご紹介いただいても良いと思います。
費用はどれぐらいかかるのか
手続きの費用はケースバイケースではあるのですが、それでは身もふたもないので、なんとなくの相場観だけでもお伝えさせていただきます。
- 相続財産が5000万円未満→10~30万円程度
- 相続財産が5000~1億円→10~50万円程度
- 相続財産が1億円以上→15万円以上
実際には手続きの内容や、当事者の人数などにより大きく異なるケースが多いので、あくまでも参考程度のお考えください。
また、弁護士さんに訴訟を依頼する場合や、税理士さんに相続税申告等を依頼される場合は、上記の金額より高額な費用が発生する可能性が高いです。
戸籍等の書類を集める実費や、不動産登記を申請する場合の登録免許税(不動産の評価額の0.4%)など、仮にご自身で手続きをされた場合でも必要な費用については、これとは別にかかってきます。
なお、どのような会社・専門家に依頼するにしても、まずは見積もりを出していただくことをオススメします。
見積もりを出し渋る場合や、見積を出すまでの段階で費用を請求される場合、他の方に相談をした方が良いかもしれません。
なお当事務所では6~15万円。平均すると10万円程度の報酬をいただくことが多いです。
また見積を見ていただき、正式にご依頼いただくまでは一切の費用を請求いたしません。
まとめ
まとめます。
- 必要な手続きごとに、資格を持った専門家に依頼することがオススメ
話し合い不可能→弁護士・相続税がかかる→税理士・不動産がある→司法書士・それ以外→行政書士を窓口に相談すれば概ね問題ないと思います。 - 各専門家を探したりする手間を省きたい場合は、民間の相続手続き代行業者に相談
- 費用がかかっても民間の相続手続き代行業者以上の安心感を得たい方には銀行・信託銀行への相談をオススメ
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湘南の不動産・相続手続の専門家、ショウ先生こと永田翔でした。