離婚をすることになりそうだが、相手(夫・妻)が「持ち家に住み続けたい」と言っている。
「そんなことできるの?」「自分にデメリットはないの?」と気になりますよね。
持ち家有りで離婚される方から、私がよくいただくご質問・ご相談は次のようなものです。
- 私の(相手の)名義に変えることはできるの?(財産分与・所有権移転)
- 住宅ローンはどうなるの?銀行には相談しないとダメ?(返済・借り換え)
- 子供の名義にすることはできるの?(贈与)
この記事を読めば、持ち家有りで離婚をする場合、どんな選択肢があるのか。それぞれの手続の方法・税金・かかる費用などが一通りわかると思います。
この記事を読んでくださっても、まだわからないことがあれば、お気軽にお問い合わせください。
私は司法書士・行政書士・土地家屋調査士・宅地建物取引士の資格を持つ、不動産に関する手続の専門家です。
ショウ先生という名前でこのブログを運営していますが、本名は永田翔と申します。
事務所は神奈川県藤沢市、いわゆる湘南地域にありますが全国どちらでも対応可能です。
実際に北海道や沖縄県にもお客様がいらっしゃいます。
目次
財産分与で名義を変えることができます(所有権移転)
離婚をした後、現在の所有者ではない方が住み続けたいということもあると思います。
一番多いのは、家は夫名義だが、妻が子供を引き取ってそのまま住み続けたいというようなパターンでしょうか。
離婚をする際に、持ち家・預貯金などの財産を分けることを「財産分与」と言います。
分け方については特に法律などでは定められておらず、当人同士が納得すればそれで問題ありません。
※ただし財産分与という制度を利用して、実質的には贈与を行っているような場合、税務上は「贈与税」の対象となる可能性があります。
手続は法務局というところで行います。
下記は当ブログの贈与に関する記事ですが、法務局に関する解説はこちらが参考になると思います。
税金はかからないの?
※私は税理士ではないので、これ以降
不動産の所有権を受け取る側については、贈与税と不動産取得税がかかるのかどうかが気になるところでしょう。
結論からいうと原則として贈与税と不動産取得税はかかりません(例外として、上記のとおり「財産分与という制度を利用した、実質的な”贈与”とみなされる場合は別です。あえて相手側に極端に有利な条件で財産分与をしたりしていなければ、まず問題ありません。」
不動産の所有権を渡す側については、不動産譲渡所得税がかかるかどうかが気になるところでしょう。
不動産譲渡所得税については「取得時よりも売却相場が上がっていればかかる」ということになります。
3000万円で買ったご自宅が、地価の高騰などにより4000万円まで値上がりをしていたりすると、上がった1000万円について税金がかかるというイメージです。
財産分与による名義変更(所有権移転登記)の必要書類は次のとおりです
- 権利書(対象となる不動産の登記済証・登記識別情報通知)
※調停調書を添付する場合は不要 - 印鑑証明書(登記申請の時点で、発行日から3か月以内のもの)
※調停調書を添付する場合は不要 - 評価証明書(最新年度のもの)
- 前住所記載の住民票(不動産を取得したときから、住所が変わっていない場合は不要)
※戸籍附票でもかまいません - ご実印
※調停調書を添付する場合は不要
- 住民票(世帯全員のものでも、受贈者のみが記載されたものでも大丈夫です)
- ご印鑑(認印でもご実印でもかまいません)
住民票・印鑑証明書・評価証明書は役所で取得できますね。
評価証明書も基本的には役所ですが、東京23区は都税事務所になるなど例外もあります。
住宅ローンを組んだ方に支払い義務が残ります。
どなたが住み続けるかに関係なく、住宅ローンを組んだ方(債務者となっている方)に支払い義務が残ります。
そうは言っても、そこを出ていく方のほうにも新しい生活があり、経済状況から「相手が住み続ける家のローンまでは支払えない」ということも多いでしょう。
そのため、実質的にはそこに住み続ける方が、住宅ローンの残債を支払い続けるというケースも多いと思います。
この状態のままで、お互いにリスク・デメリットはないのかについて説明していきます。
住み続ける側には競売などのリスクがあるので、所有権は移転しましょう。
住宅ローンの名義がそのままであっても、所有者については住み続ける方に変えておいた方が良いです。
元配偶者が、住宅ローン以外の借金や税金などについて滞納をした場合に、リスクがあります。
このような場合、自宅の所有者がその元配偶者のままであれば、差押をされてしまうかもしれないからです。
差押をされた場合、貴方が代わりに返済をするだけのお金を用意できなければ、そのまま競売になってしまう可能性が高いでしょう。
これを避けるためには、住宅ローンの名義を変えることが難しい場合でも、財産分与によって所有権だけでも移転しておいた方が良いです。
なお住宅ローンの契約上、このような場合は銀行等の金融機関に相談・報告をすることになっていることが多いです。
実際のところ、銀行に相談せずに所有権移転をしたとしても、返済に滞りがなければバレることはまずないと思います。
ただ秘密にしていてバレた場合は、それについて追及される可能性はありますので、そのリスクを考慮して、なるべく事前に相談された方がよろしいかとは思います。
ご不安な場合は、お気軽にご相談ください。
住み続けない方は、新たに住宅ローンが組めないというデメリットがあります。
離婚された方にも、もちろん新しい生活があると思います。
特に再婚された場合など、新しいご家族と住むための新居を購入するため、新たに住宅ローンの検討をすることなどもあるでしょう。
しかしちょっと待ってください。このような場合に、元ご自宅のローンについて債務者として名前が残っていると問題があります。
結論として、このままではまず新しく住宅ローンを組むことはできません。
例え実際に支払っているのは元配偶者であっても、銀行から見ると「住宅ローンを2件組もうとしている」と思われてしまうためです。
「債務者になっているだけで、今は実際に支払っているのは私ではなく元配偶者です。」などと事情を説明をしても、もちろんダメです。
そのため、もし元配偶者の方が住宅ローンを組めるようであれば、ご自身は住宅ローンの債務者ではなくなれるように手続をしてもらった方が良いでしょう。
具体的には「元配偶者の方がローンを組む」「そのお金で財産分与の対価として貴方にお金を支払う」「貴方は債務者となっている住宅ローンを完済する」「今後は貴方は住宅ローンとは無関係になり、元配偶者の方が新しく組んだローンを支払っていく」という形になります。
この流れはどこの銀行でもできるわけではないと聞いています。
ご希望であれば対応できる金融機関をご紹介することができます。
住まない場合・支払いが難しい場合は、売却を検討しましょう。
結婚しているときに一緒に住んでいたお住まいは、離婚後の生活には広すぎるということもあります。
また夫婦2人の収入で住宅ローンを支払っていた場合や、相手が家事を負担していてくれたからこそフルタイムで働けていた場合など、離婚後は住宅ローンの支払いが難しいという場合もあります。
もしご自宅を売却すれば住宅ローンが完済できる場合は、何の問題もありません。
特に知り合いの不動産業者さんなどがいなくても、町の不動産屋さんや大手不動産屋業者が売却を引き受けてくれるはずです。
問題はオーバーローンとなっている場合ですね……
オーバーローンとなっている場合でも、任意売却という手法で売却ができる。
オーバーローンというのは、ご自宅を売却しても住宅ローンの残債務を完済できない状況のことです。
例えば住宅ローンの残債務が3000万円残っているとしましょう。
しかし売却できる金額が2500万円であれば、それだけでは残債務の支払いに500万円が不足してしまいます。
それでも手持ちの預貯金などで500万円を用意できるのであれば、それをあわせて完済することもできます。
しかし手持ちの資金もそれに満たない場合は、普通の不動産屋さんでは売却することは難しくなります。
なぜなら、住宅ローンを貸している銀行などの金融機関としては「完済してもらわない限りは、担保権(抵当権)を解除することができない」となり、購入する買主さんとしては「担保権(抵当権)がついたままの不動産は買えないよ」となってしまうからです。
このような場合でも、金融機関や保証会社と交渉を行って、任意売却という手法で売却をすることができます。
ここでは詳しい説明は省きますが「完済できない場合は通常は”強制”競売などになるが、”強制”ではなく”任意”に売却をする」という意味で”任意売却”と呼ばれています。
このような場合、任意売却を得意としている不動産業者でないと、対応が難しいです。
そのため大手不動産業者や町の不動産屋さんを利用するのではなく、慣れた不動産業者を探して相談してください。
私は司法書士の他に宅地建物取引士の資格も持っており、任意売却にも精通しております。
私でお役に立てるようでしたら是非ご相談ください!
お子さんの名義にすることもできますが、贈与税には注意が必要。
「財産分与で私がもらうのではなく、贈与で子供の名義にしてあげたい」このようにおっしゃる方もいらっしゃいます。
法律的には贈与でお子さんに所有権移転をすることももちろんできます。
しかし贈与をするとなると原則として贈与税がかかります。
熟年離婚であれば、相続時精算課税制度を利用することができるかもしれません。
この相続時精算課税制度を利用するためには、贈与をする側(親)が60歳以上、贈与を受ける側(子供)が20歳以上でなければいけません。
遺贈(死んだらあげます=贈与します。という契約)を用いることもできますので、ご希望であれば検討の余地はあるかもしれません。
なお年間110万円までは非課税で贈与ができる、いわゆる暦年贈与というものもあります。
しかしこちらについては、「分割払いのように、分割して贈与しているだけで、元々所有権全体を贈与するつもりでしたよね?」と、全体を贈与したものとして贈与税を課税されたケースもあると、税理士の先生から聞いたことがあります。
税務署から指摘を受けてから、「贈与税がかかるなら、やっぱり贈与しません。」なんてことはできません。
手続をする前にご相談ください。
必要書類などはこちらの記事で紹介しています。
手続前後の相談などについても、ご希望に応じて税理士さんをご紹介させていただいております。
調べものや書類作成に抵抗のない方なら自分でできるかも
財産分与による名義変更(所有権移転登記)の専門家は司法書士です(資格としては弁護士さんも受任できますが、ほとんどの弁護士さんは訴訟関係ほど登記手続には詳しくないと思います。また弁護士・司法書士以外の士業の方は、贈与による不動産登記手続の依頼を受けることは、法律上認められておりません。)
しかし専門家に依頼をするとなると、どうしても報酬がかかってしまいます。
参考までに当事務所では、契約書の作成から登記申請までの手続一式で、金10万円程度の報酬を頂戴しております(事例により多少の増減あり)。
そこで「自分でやれば報酬はかからないよね」と思われる方もいらっしゃると思います。
しかし住宅ローンの債務者を変更する・実際に住み続ける方の名前で住宅ローンを借り換えるといったような、金融機関が絡む案件であれば、必ず司法書士に依頼をすることになるはずです。
※ほぼすべての金融機関で、司法書士への依頼が必須になっていると思います。
金融機関が絡まない場合は、自分でやったとしても誰も文句を言いません。
Webや書籍で調べものをして、書類作成をすることに抵抗のない方であれば、ご自身でも充分できる手続きだとは思います。
とはいえ、一般的に市役所・区役所などで行う住所変更などの手続きと同じような感覚で行くと、面食らうことになると思います。
Webや書籍でお調べになった上で、数回は平日の開庁時間内に法務局に行くつもりでいた方が無難だと思います。
平日の日中に時間を作ることが難しい方や、書類作成などが得意ではないという方は、専門家への依頼を検討された方が良いかもしれません。
費用(登録免許税)は対象不動産の2%・司法書士報酬は10万円程度
費用(登録免許税)は不動産の2%
財産分与によるご自宅の名義変更手続はを自分でやったとしても、登記申請をする際には「登録免許税」と呼ばれる税金はかかります。
対象不動産の評価額の2%がかかります。
計算方法は次のとおりです。
対象となる不動産の評価額を合計し、1,000円未満の端数をカット。
その金額の2%から100円未満の端数をカット。
例:12,341,234円の建物と、56,785,678円の土地を贈与する場合。
合計額は69,126,912円で、この1000円未満の端数をカットすると、69,126,000円。
この2%が1,382,520円。その100円未満の端数をカットすると、1,382,500円。
この1,382,500円が、合計69,126,912円の不動産を財産分与した場合の、登録免許税となります。
評価額は売買価格などとは異なります。
不動産の評価証明書・公課証明書・納税通知書などに記載されている数字になります(自治体によっては「価格」と書かれていることもあります)。
評価証明書・公課証明書は役所の税務課などで取得できる自治体が多いです。
ただし東京23区内は都税事務所で発行されています。他の一部の自治体でも、例外があるかもしれません。
納税通知書は毎年5月頃に、不動産の所有者の方あてに郵送されてきます。
また住宅ローンが絡む場合、それについては別途費用がかかります。
例えば抵当権の設定をする場合、ご融資を受ける金額の0.4%が登録免許税として必要になります。
1000万円なら4万円、3000万円なら12万円がかかります。
司法書士報酬は10万円程度
おそらく司法書士に依頼をするのであれば、報酬は10万円程度になるのではないかと思います。
ただし報酬額は一律幾らと決められているわけではないので、その司法書士の方により異なります。
当事務所の報酬額は約10万円。たぶん相場ぐらいだと思います。
また案件の内容や不動産の評価額・個数などにもよって、報酬額が変わることが多いと思います。※中には一律何万円という報酬体系の司法書士事務所もあると思います。
こちらについても、住宅ローンが絡む場合、それについても別途費用がかかります。
当事務所ではこちらについては、だいたい7~9万円程度頂戴しております。
司法書士に頼めば申請まではすぐ。終わるまではそこから1週間程度。
財産分与による名義変更(所有権移転)の登記手続は、司法書士が取り扱う業務の中では、特別難解なものではなく、一般的な業務に含まれると思います。
弁護士さんにとっての「よくある訴訟」や、お医者さんにとっての「よくある手術」もそうですが、司法書士にとって一般的だからといって、すごく簡単な手続だとは思わないで下さいね。
司法書士の方の忙しさやスピード感にもよりますが、通常であれば1週間もあれば書類が完成すると思います。
※当事務所ではお急ぎであれば、空き状況にもよりますが、当日・翌日などの書類の準備も対応可能です。
ただし法的な問題や税務上の問題で検討を要する場合などは、その内容によっては時間がかかるかもしれません。
書類に署名・押印をし、必要な書類を準備して預ければ、登記の申請がされるはずです。
申請をした後は、法務局の混み具合などにもよりますが、1週間程度で登記が完了すると思います
その後、登記完了後の書類が送付されるまでには、もう少し時間がかかると思います。急ぐ事情がある場合などは、司法書士の方に「なるべく急ぎで納品してほしい」と、ちゃんと伝えるようにしましょう。
まとめ
まとめます。
- 財産分与による不動産の名義変更は「所有権移転」という手続で「法務局」で行います。
- 銀行に相談しなくてもまずバレないが、できれば相談した方が良い。
また住み続けない方が住宅ローンの名義人になっている場合は、所有者や債務者を変えるための手続をした方が良い。 - お子さんへの贈与をする場合は、贈与税に注意が必要。
- 住宅ローンの手続が不要であれば自分でもできるが、それなりには難しい。
調べものや書類作成が苦にならない方なら、挑戦してみても良いかも。 - 自分でやるなら不動産評価額の2%を登録免許税として法務局に納める。
司法書士に依頼するなら約10万円程度(依頼する司法書士に要確認) - 住宅ローンが絡む場合は融資額の0.4%の登録免許税、司法書士報酬が7~9万円程度別途かかる。
- 1週間もあれば準備はできる。
申請からさらに1~2週間程度で手続が完了することが多い。
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湘南の不動産・相続手続の専門家、ショウ先生こと永田翔でした。