「土地の名義が先祖代々変更していないんだけど、何か問題はあるのかな?」こんな相談をいただくことがあります。
「相続登記が義務化と聞いたけど違法なの?」「ほったらかしにすると何かリスクがあるの?」と不安に思われる方も少なくないようです。
現時点では違法でこそないものの、様々なリスク・デメリットがあります
※記事は2022年6月21日に書いております。
できることなら、なるべく早く名義変更の手続をした方が良いでしょう。
参考までに当ブログ内の、土地・建物名義変更手続=相続登記に関する記事はこちらです。
この記事を読むと、こんなことがわかります。
- 相続登記義務化はいつから始まるのか
- 相続登記義務化はどのような制度なのか
- 相続が発生した土地・建物の名義変更をしないで放置しておくとどのようなリスク・デメリットがあるのか
なお、私は司法書士の資格を持つ、不動産・相続手続の専門家です。
ショウ先生という名前でこのブログを運営していますが、本名は永田翔と申します。
不動産に関する登記の専門家は司法書士です。
行政書士や税理士の先生が、登記を申請することはできません。
事務所は神奈川県藤沢市、いわゆる湘南地域にありますが全国どちらでも対応可能です。
実際に北海道から沖縄県まで設立登記の申請をしたことがあります。
ご依頼・ご相談はこの記事のコメント欄やお問い合わせページから、お気軽にどうぞ。
目次
相続登記義務化は2024年(令和6年)の4月1日から
土地・建物の相続による名義変更手続のことを、「相続登記」と言います。
2024年の4月1日から、この「相続登記」が法律で義務化されます。
不動産について、自分を相続人とする相続が発生していることを知ったときから、3年以内に相続時をしないといけません。
ただし、すでに相続が発生していることを知っていた不動産については「2024年の4月1日から3年以内」、つまり「2027年の3月31日まで」に相続登記を申請しないといけないということになります。
3年以内に相続登記をしないと10万円以下の過料(かりょう)を支払うことになる可能性があります。
過料は罰金に似ています。
ただし罰金は前科がつきますが、過料では前科がつきません。
より詳しく知りたいという方のために、当ブログ内の下記記事で詳しく説明しております。
名義変更手続(相続登記)をしないとデメリット/リスクがあります
先ほども触れましたが、相続による不動産(土地・建物)の名義変更手続を「相続登記」と言います。
次のようなことをするためには、その前提として「相続登記」を済ませる必要があります。
- 不動産(土地・建物)を売りたい
- 不動産(土地・建物)を担保にお金を借りたい
- 建物を建て替えたい※底地について相続登記が必要となります。
登記簿に”所有者”として書かれていないと、上記のような行為をする際に手続ができません。
長年相続登記を放置してしまっていると、次のようなデメリット・リスクがあります。
関係者が増えることにより、手続が大変になってしまう
例えば、あなたの父方のお祖父さんが亡くなったとしましょう。
ここでは仮に、あなたのお父さんに妹が1人いるとします。
このとき、お祖母さんがまだ生きていらっしゃれば、相続人は次のようになります。
お祖母さん・お父さん・叔母さん(お父さんの妹)
この時点で相続登記をするのであれば、必要書類は次の通りです。
※これとは異なる場合もありますが、話をシンプルにするために最も一般的なケースで説明させてください。
- お祖父さんの生まれてから亡くなるまでの戸籍一式
- お祖母さん・お父さん・叔母さんの戸籍、住民票、印鑑証明書
おそらく司法書士に相続登記を依頼したとすると、10万円前後の報酬で対応している事務所が多いと思います。
この時点で相続登記をするのであれば、自分でやるとしても負担が比較的軽いでしょう。司法書士に頼むとしても、報酬が高額になることはありません。
さて、この時点で相続登記をせずに、放置してしまったとしましょう。
そうすると、年齢からすると①お祖母さん②お母さん③叔母さんの順に亡くなっていきますよね?
そうすると、相続人は次のようになります。
あなた・あなたに兄弟がいればその全員・叔母さんにお子さんがいれば従兄弟全員
そして必要書類は次のようになります。
- お祖父さんの生まれてから亡くなるまでの戸籍一式
- お祖母さんの生まれてから亡くなるまでの戸籍一式
- お父さんの生まれてから亡くなるまでの戸籍一式
- 叔母さんの生まれてから亡くなるまでの戸籍一式
- あなた・兄弟全員・従兄弟全員の戸籍、住民票、印鑑証明書
かなり増えましたね?こうなってくると自分で集めるのも大変です。
司法書士に依頼するとしても費用が高くなってしまうと思います。
仮にですが、「基本報酬が10万円・相続人に亡くなった方がいる場合は1人につき追加報酬5万円」という報酬体系の司法書士事務所があったとしましょう。
この時点でお祖父さんの相続人の3人が亡くなっているので「10万円+5万円×3」で報酬額が25万円となってしまいます。
※当事務所ではもっと費用はこれよりももっとお安いです。
報酬が2.5倍になっています。戸籍を集める手間なども、それだけ増えてしまうということです。
さらに放置すると、相続人は次のようになっていきますね。
あなたの配偶者・お子さん・従兄弟全員の配偶者やお子さん
こうなってくると人数も多いですし、付き合いもかなり疎遠になってしまっている方も含まれてくると思います。
相続手続には相続人全員の協力・関与が必要ですので、これでは手続が大変になってしまうというわけです。
認知症の人は遺産分割協議ができない
今度はあなたのお父さんが亡くなった場合の、相続について考えてみましょう。
この場合、相続人はあなた自身のほか、お母さん・ご兄弟全員となります。
「自宅はまだお母さんが住んでいるし、同居するか施設に入るタイミングで売却するから、そのときに相続登記をすれば良いだろう」と思っていると、大変なことになります。
というのも、”同居するか施設に入るタイミング”ということは、お母さんが一人暮らし(独居)をすることに、無理が出てきたということですよね?
つまりこのタイミングでは、お母さまが認知症になっているというケースも少なくないのです。
認知症になると判断能力が低下、場合によっては全くなくなってしまいますね。
この状態を法的には「意思能力がない」と言います。
この「意思能力がない」という状態になると、契約行為などを行うことができます。
たとえ親族間の話であるとはいえ、遺産分割協議も法律行為ですから、お母さまが自分でこれを行うことはできなくなります。
成年後見制度を利用すれば、成年後見人よばれるお母さまの代理人との間で、遺産分割協議書を作成することはできます。
しかし費用や手間がかかりますし、お母さまが認知症になる前に「お父さんの財産はあなたに相続させる」と口で言っていたとしても、成年後見人はそれを認めないでしょう。
あなたやご兄弟が成年後見人になった場合でも、お母さまの代わりに遺産分割はできません。
この場合は特別代理人という方を、裁判所で選任してもらう必要があります。
認知症になった親御さんの不動産の売却等については、当ブログの下記記事が参考になります。
相続人の誰かが借金・税金を滞納していると、不動産を差し押さえされるかも
あなたの親御さんが亡くなった場合、あなたに兄弟姉妹がいれば、あなたとともに相続人になります。
この兄弟姉妹のどなたかが、借金や税金を滞納した場合に、ご実家などの相続による名義変更(相続登記)が済んでいないとこのようなことになります。
- 消費者金融や国・地方自治体は、あなたのご兄弟の財産を差し押さえることができます。
- 相続の手続がされていない不動産・預貯金についても差押の対象となります。
※話し合いにより、他の相続人がもらうことになっていたとしても - 不動産であれば、まず債権者等が相続人に代わって、法定相続分での相続登記を行います(代位と言います)。
※ちなみに法定相続分は配偶者が2分の1・子供達は残った2分の1を平等に分けることになります。
子供がいない方の場合は、親(祖父母)→兄弟姉妹の順で相続権が発生します。 - その後、実際に借金や税金滞納をしている方の持分だけを差押してしまいます。
こうなると「兄弟姉妹の話し合いでは、自分が不動産をもらうことが決まっていた」と言ったところで、債権者や国・地方自治体などには通用しません(法的には「対抗できない」と言います)。
要らない・関わっていない不動産でも、あなたに損害賠償などがくるかも
「自分が相続人になったことは知っているけど、要らない不動産(土地・建物)だから関係ないね」という方も、中にはいらっしゃるでしょう。
しかしその土地について土砂崩れが発生したり、草木の放置により近隣に迷惑をかけた場合などは、あなたにも損害賠償請求がきてしまうかもしれません。
要らない不動産であれば、相続したい人・すべき人にちゃんと相続の手続を進めてもらいましょう。
ちゃんと他の相続人の名義に変えれば、あなたがこの不動産に関係ないということの証明にもなるのです。
参考:役所で書類が破棄・処分され、書類を集めることが難しくなることもあった
かつては戸籍や住民票の保存期間が今よりも短く、役所でデータが破棄されたために、書類を集めることが不可能となるケースもありました。
具体的には戸籍が80年間・住民票や戸籍附票は5年間が保存期間でしたから、亡くなってから5年以上経っていると、住民票等はすでに取得できなくなっていたのです。
しかし令和元年に保存期間を150年とする改正があったので、今はそのようなことは起きづらいと思います。
今も「保存期間が過ぎてしまう」と内容を更新していないサイトもあります。
当ブログはマメに記事を更新したいと思っております。
ただ令和元年の改正前にすでにデータが破棄されていたものについては、必ずしも戸籍や住民票が復活するわけではありません。
そのような場合でも専門家である司法書士であれば対応は可能ですが、ご自身で手続を進めるようと思っていた方はハードルが上がってしまうかもしれませんね。
お問い合わせはこちら
※戸籍や住民票のデータが破棄されている案件でも、それを理由とする追加費用等は頂戴しておりません。
まとめ
- 相続登記は2024年(令和6年)4月1日から義務化され、違反をすると10万円以下の過料を請求される可能性があります。
- 義務化前でも、不動産の名義変更(相続登記)を放置すると、様々なリスク・デメリットがあるため、早期に手続をすることが望ましいです。
- 司法書士に依頼する場合、報酬の目安は10万円前後です。
当事務所は全国対応。見積や初回相談には報酬・費用が発生しません。
ぜひお気軽にお問い合わせください。
弁護士・税理士・行政書士などの士業の方や、大手不動産会社・建設会社からもご相談いただいております。
【違法?】相続による土地の名義変更をしていないとどうなる【リスク】の記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました。
Twitterでも不動産・相続・会社法人などの手続に関する投稿をしています。
ご興味を持ってくださった方は、ぜひフォローをお願いいたします!