「遺言書で”孫の〇〇に相続させる”とか書けば良いんでしょ?」と思われる方もいらっしゃると思います。
それだけでも、お孫さんに財産を譲ることはできるのですが……
しかし普通に遺言を書いただけでは、孫に遺産相続をさせた場合の様々なリスクやデメリットに対応することができません。
孫に遺産相続をさせたい場合は、色々と気をつけるべき点があります。
この記事を読むと、こんなことがわかります。
- 孫に遺産を相続させる方法
- 相続以外の方法で、孫に財産を譲る方法
- 孫に遺産を相続させることのメリット・デメリット
なお、私は司法書士の資格を持つ、相続や不動産の手続きの専門家です。
ショウ先生という名前でこのブログを運営していますが、本名は永田翔と申します。
特に不動産の相続登記、いわゆる名義変更の専門家は司法書士です。行政書士や税理士の先生は、相続による登記を申請することはできません!
事務所は神奈川県藤沢市、いわゆる湘南地域にありますが全国どちらでも対応可能です。
実際に、北海道から沖縄県まで不動産登記の申請をしたことがあります。
ご依頼・ご相談はこの記事のコメント欄やお問い合わせページから、お気軽にどうぞ。
目次
孫に遺産をあげる方法は、少なくとも4種類あります
孫に遺産をあげるには、次のような方法があります。
- 遺言書を書いておく
- 死因贈与の契約をしておく
- 家族信託・民事信託の契約をしておく
- 養子縁組をする
「孫に相続させる」という遺言書を書いておく
遺言書を書くことは、相手の承諾などなく1人ですることができます。
ただし実際には、自分が死んだ(=相続が発生した)段階で、相手がそれを承認する必要はあります。
あくまでも遺言書を作成する時点では、自分1人でできるという意味です。
仮に一度作成したとしても、気が変わったらまた書き換えることができます。
この際も誰の同意を得る必要もありません。
「自分が死んだら孫に贈与する」という贈与契約書を作っておく
「死んだらあげる(=贈与する)」という契約を、死因贈与と言います。
これは遺言書とは異なり、契約になります。あげる人(贈与者)が1人でするわけではなく、もらう人(受贈者)と贈与契約を結ぶことになります。
契約ですので、仮に「やっぱりあげるのを辞めたい」と思っても、相手の同意なしに撤回することはできません。
これはもらう側からするとメリットですが、あげる側からするとデメリットです。
「財産をあげる約束をしたとたんに態度が変わった」なんて話も聴きますからね
家族信託・民事信託と呼ばれる契約を行う
話すと長くなるので、後日、別のページを作成してリンクを貼ります。
記事作成前に、詳しい話を聴いてみたいという方は、お気軽にお問い合わせください。
信託とは「信じて託す」という字のとおり、財産(例えば不動産など)を預ける契約です。
この契約の中で、「契約が終了したら、財産は誰々のものにする」と、遺言のような内容を決めることもできます。
養子縁組をするが、それ以上は何もしない
孫と養子縁組をすることもできます。
そうすると、孫は子供の1人になります。
こうなると孫も相続人になります。
これは、仮に孫の親である、あなたの子が生きていたとしても変わりません。
養子縁組をした場合、あなたが亡くなった際に孫が他の相続人と遺産分割の協議をします。
なお養子縁組をした上で、前述の遺言書・贈与・信託などをすることもできます。
孫に遺産相続させると税金が高くなる可能性がある
「あげる相手で税金が変わる?他人ならわかるけど、子供にあげる場合と孫にあげる場合でも、税金が違うのか!?」
そう思われる方もいらっしゃるでしょう。
なぜ違うのかについては、これから説明していきます。
孫は原則として相続人ではない
まず、お孫さんは原則として、あなたの相続人ではありません。
ですから、遺言書に「孫に相続させる」と書いたとしても、法律的には赤の他人に財産をあげた場合と同じです。
これを遺贈(いぞう)と言います。
“遺”言によって”贈”与するので、「遺贈」というわけですね。
「遺贈」であっても、確かに遺産をお孫さんに引き継がせることはできます。
しかし、法律上の効果が違うので、税金も異なってくるのです。
相続人が遺産を引き継ぐ場合は「相続」。それ以外の人が財産を引き継ぐ場合は「遺贈」や「死因贈与」つまり「贈与」になります。
「相続」の場合は相続税、「贈与」の場合は贈与税になりますが、この2つは税率(支払う税金)が大きく違います。
詳しくは後の項目で説明していきますね!
孫が相続人として遺産を引き継げる場合
「孫は相続人ではない」と書きましたが、次のような場合、お孫さんにも相続権があります。
- 養子縁組をした場合(上の方で簡単に説明しています)
- お孫さんの親に当たる、あなたのお子さんが亡くなっている場合(代襲相続)
孫と養子縁組をすると、孫も相続人になる
祖父母と孫の間で、養子縁組をすることができます。
養子縁組をすると、孫でありながら、子の1人にもなります。
少し不思議な感じもしますね。
子の1人になったということは、他の子と同じように、相続人の1人になるということです。
代襲相続が発生している場合
あまりなじみがない言葉かもしれませんので、代襲相続(だいしゅうそうぞく)について簡単に説明させてください。
あなたにお孫さんがいるということは、もちろんお子さんがいらっしゃるはずですよね。
しかし、不幸にもそのお子さんが、事故や病気などであなたよりも先に亡くなってしまうということはありえます。
そのお子さんに子供がいれば、その子供(あなたにとっての孫)が代わりに相続人になります。
これを代襲相続と言います
それ以外のケースでは、孫は民法上の相続人ではない
つまり財産をあげたとしても、法律上は血のつながりがない方に贈与をした場合と同じになります。
このような場合、税務上も「相続」ではなく「贈与」という扱いになります。
そして一般的に「相続」よりも「贈与」の方が税金が高くなります。
孫に遺産を相続させた場合の税金
孫に遺産を相続させる場合といっても、大きくわけて次の2つがあります。
- 孫が法律上の相続人になっていない場合
- 孫が法律上の相続人になっている場合(養子縁組をしている・代襲相続が発生している)
後者は子供などの相続人にあげる場合と同じだけど例外的に高くなるという感じです。
前述のとおり、お孫さんの親にあたる、あなたの子が生きている場合、お孫さんは相続人ではありません。
この場合、仮に遺言書に「相続させる」と書いたとすると、あなたの意思通りに遺産はお孫さんに譲られることになります。※お孫さんが財産を受け取る意思を示せば。
しかし、法律上は「相続」ではなく「遺贈」という扱いになり、血のつながりのない他人に贈与をした場合と、税務上は同じように取り扱われることになります。
この例外となるのが、代襲相続が発生している場合と、養子縁組をしている場合です。
代襲相続が発生している場合、お孫さんが相続人になる
代襲相続とは、あなたのお子さんが、あなたよりも先に亡くなっている場合に、そのお子さんに子供(あなたからすると孫)がいる場合に起こります。
例えば長男・次男がおり、それぞれに子供がいるとします。
例えば事故や病気などで長男が亡くなっている場合、長男について代襲相続が発生し、長男の子である孫も相続人になります。
この場合は「配偶者・長男の子・次男」が相続人となります。
養子縁組をした場合も、孫は相続人になる。
「そもそも祖父母が孫を養子にすることなんてできるの?」という疑問もありそうです。
養子縁組をするための要件の一部を、下記に抜粋します。
1.養親が20歳に達していること
2.養子となる方が、養親となる方の嫡出子、養子ではないこと
3.養子となる方が養親となる方の尊属、年長者ではないこと
(以下略)
大阪市Webサイト:養子縁組届
孫を養子にしてはいけないという規定はありません。
孫が相続人であれば、若干割り増しの相続税。そうでなければ贈与税。
孫が法律上の相続人である場合、相続税の税率で計算することになります。
ただし、養子縁組をしているが、その親であるあなたの子も生きているという場合、次の規定により相続税が加算されます。
相続税と贈与税の違い
相続税の場合は、「遺産が一定の金額以下であれば、そもそも税金がかからない」という枠が比較的大きいです。
3000万円+相続人の人数×600万円が、相続税のかからない範囲です。
※養子はたくさんいても全員が相続人としてカウントしてもらえるわけではありません。
他に相続人がいる場合は1人、いない場合は2人が、上記の計算式における養子の上限です。
民法上は養子縁組をたくさんしてはいけないという規定はありませんが、無制限に非課税枠を広げさせるわけにはいかないので、このような規定になっています。
例えば相続人が3人であれば、3000万円+600万円×3人で遺産の合計4800万円以下であれば相続税がかからないということになります。
これに対して、贈与税は、なんらかの特例を用いない場合は年間110万円までの非課税枠があるのみです。
それを超えた金額については贈与税の対象となります。
下記のサイトが参考になります。
相続税の2割加算とは
相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した人が、被相続人の一親等の血族(代襲相続人となった孫(直系卑属)を含みます。)および配偶者以外の人である場合には、その人の相続税額にその相続税額の2割に相当する金額が加算されます。
国税庁Webサイト:相続税額の2割加算
話をわかりやすくするために、孫が相続人となっている場合に話を絞ります。
結論からいうと、代襲相続によって孫が相続人となっている場合は2割加算がありません。
養子縁組によって孫が相続人となっている際、孫の親(あなたの子)が生きている場合は、相続税が2割加算されます。
相続税額の2割加算の対象になる人
国税庁のサイトから孫に関するする部分を抜き出すと、次のように書かれています。
例えば、以下の方は相続税額の2割加算の対象になります。
国税庁Webサイト:相続税額の2割加算
(中略)
(2) 被相続人の養子として相続人となった人で、その被相続人の孫でもある人のうち、代襲相続人にはなっていない人
全財産5000万円相当を孫に「相続」「贈与」で譲った場合の税金
私は税理士ではないので、一般的な話に留めさせていただきますが、次のような計算方法になります。
国税庁Webサイト:相続税の税率
国税庁Webサイト:贈与税の計算と税率
相続の場合、税金は24万円(家族構成により異なる)
相続人の人数で、相続税がかからない金額が変わります。
ここでは、仮に配偶者他界済・子供2人(存命中)・孫と養子縁組をしているという前提で計算をしていきます。
相続人が3人(子供2人+養子である孫1人)の場合、3000万円+600万円*3人で4800万円までは相続税がかかりません。
そのため全財産が5000万円であれば、5000万円-4800万円で200万円に対して相続税がかかります。
1000万円以下の場合、相続税率は10%ですので20万円。
これに前述の孫が相続する場合の2割加算をして24万円。
この24万円が、5000万円の財産を相続した孫が、相続税として納付すべき金額です。
思ったより安いと感じた方が多いのではないでしょうか?
贈与の場合、税金は1825万円(孫の年齢により異なる)
贈与をする場合、孫がその年の1月1日時点で20歳以上かどうかで税率が異なります(20歳以上の方が税率が低い=税金が安いです)。
ここでは20歳以上だったという前提で計算をしてみます。
4500万円を超える贈与の場合、最高税率の55%になります。4500万円の55%は2475万円。
ここから650万円の控除があるので、2475万円-650万円で1825万円。
この1825万円が、5000万円の財産の贈与(遺贈・死因贈与含む)を受けた孫が、相続税として納付すべき金額です。
先ほどの相続の場合と比べると、かなり高いですよね。
早めに手続をすることが重要
遺言・贈与・養子縁組など、いくつかの方法をご紹介してきました。
いずれも祖父母の側が重度の認知症になった場合などはできなくなります。
またここでは紹介していませんが、生前贈与を使って財産を譲る場合、亡くなる前3年以内に行った贈与については、贈与がなかったものとして相続税の計算をされてしまうなどといった影響があります。
手続をする方針が固まったら、なるべく早く専門家に相談するなどして、手続を進めることが大切です。
当事務所とその提携税理士・弁護士の初回相談料は無料です。ぜひお気軽にお問い合わせください。
まとめ
- 孫に遺産・財産を譲る方法は幾つかある。
- それぞれ法律的効果や税金が異なるので、比較検討が必要。
- 手続をする方針になれば早めに相談・実行することが大切
「遺言書さえ書いておいてくれれば……」などという相続人の方からの恨めしい言葉を聴くことも少なくありません
私は司法書士なので相続や不動産の手続きに精通しています。
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記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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