【登記の専門家 司法書士が解説】住所変更登記の義務化【2026年施行】

目次

住所変更登記の義務化に気をつけるべき人

2026年4月に施行されたことで、様々な媒体で目にする「住所変更登記の義務化」。

しかし、売買・相続・贈与などで不動産を取得した登記を、これからする方は、住所変更登記の義務化を気にする必要は、ほとんどありません。必然的に、後述する「検索用情報の申出」をすることになるためです。

しかし、2025年4月20日以前に不動産を取得して登記をした方には、この記事がお役に立つかもしれません。

ショウ先生
ショウ先生

「住所変更登記を怠って、過料(行政罰で、前科のつかない罰金刑のようなもの)を受けることがないよう、気をつけましょう」

私は司法書士・行政書士として開業している永田翔と申します。ショウ先生という名前でこのブログを運営しています。
事務所は神奈川県藤沢市、いわゆる湘南地域にありますが全国どちらでも対応可能です。
実際に北海道や沖縄県の不動産登記も、何度も申請したことがあります。

この記事のポイント

  • 2026年(令和8年)4月1日から、不動産の住所・氏名変更登記が義務化されます
  • 変更があった日から2年以内に申請しなければ、5万円以下の過料が科される可能性があります
  • 施行日より前の未登記分は2028年3月31日までに申請が必要です(施行日の前に住所変更があった場合も、遡って罰則が適用されます)
  • 負担軽減策として「スマート変更登記」(法務局が職権で登記をしてくれるようになる制度)が新設され、登録免許税も非課税になります。
  • 相続登記義務化(2024年4月施行)と合わせると、最大15万円の過料を受けるリスクもあるので、注意が必要です

はじめに:なぜ今「住所変更登記の義務化」が必要なのか

「引っ越しをしたけれど、不動産の登記簿の住所はそのまま」――そんな状態の方は、決して少なくありません。これまで住所や氏名の変更登記は任意であり、放置していても罰則はありませんでした。

しかし、2026年(令和8年)4月1日からは、そうではありません。不動産登記法の改正により、所有権登記名義人の住所・氏名変更登記が完全に義務化されました。

本記事では、義務化の具体的な中身、罰則の内容、新設される「スマート変更登記」の利用方法、そして今からできる準備まで、最新の法務省情報をもとに、登記手続きの専門家である司法書士が、徹底的に解説します。


法改正の背景:深刻化する「所有者不明土地問題」

国土の23%が所有者不明という現実

国土交通省の最新調査(令和6年)によれば、日本国内の土地のうち約23%が所有者不明土地であると推計されています。その面積は約410万ヘクタールにのぼり、実に九州の面積(368万ヘクタール)を上回る規模です。

所有者不明土地は、以下のような社会的損失を生み出しています。

  • 公共事業(道路・河川整備など)の停滞
  • 災害復旧・復興の遅れ
  • 土地の荒廃・放置による近隣環境の悪化
  • 取引・利活用の阻害による経済的損失

ショウ先生
「実際に相談を受けたケースとして、隣地からガス管がはみ出しているが、空き家で、不動産登記簿上の住所に行っても住んでいなかったという話がありました。」

発生原因の約3割が「住所変更登記の未了」

最新の国土交通省調査では、所有者不明土地の発生原因のうち約29%が「住所変更登記の未了」によるものとされています(なお、所有者不明土地問題研究会の旧調査では32.4%という数値も示されています)。

つまり、相続だけでなく、引っ越し時の登記放置が所有者不明土地の大きな原因の一つになっているのです。今回の義務化は、この「入口」をふさぐための抜本的な改革といえます。


【本題】住所・氏名変更登記の義務化とは

義務化の対象者と期限

不動産(土地・建物)を所有するすべての個人・法人が対象です。住所や氏名(法人の場合は本店所在地・名称)に変更が生じたら、所定の期限内に変更登記を申請しなければなりません。

変更が生じた時期申請期限
2026年4月1日以降変更日から2年以内
2026年4月1日より前2028年(令和10年)3月31日まで

ポイントは、施行日より前にすでに住所や氏名が変わっていた人にも遡及適用(遡って適用)されるという点です。「昔の話だから関係ない」ではなく、登記簿の住所が現住所と違っている、すべての所有者が対象になります。

罰則:正当な理由なく怠ると5万円以下の過料

正当な理由がないのに住所変更登記の申請を怠った場合、不動産登記法第164条第2項にもとづき、5万円以下の過料が科される可能性があります。

ただし、いきなり過料が科されるわけではないかもしれません。一般的には次のプロセスをたどります。

  1. 登記官が義務違反を把握する
  2. 本人に対して「催告(通知)」が送られる
  3. 催告期間内に申請すれば過料は免れる
  4. それでも放置すると、裁判所により過料の決定がなされる
ショウ先生
ショウ先生

「実務上は、登記申請をした際に、初めて登記懈怠が発覚することも少なくないと思われます。法人登記申請の過料と、同じような取り扱いであれば、登記申請後に、突然過料の請求がされる可能性も、あり得ないとは言えません。」

「正当な理由」として認められるケース

法務省の解釈によれば、以下のような事情は「正当な理由」として認められる可能性があります。

  • 重篤な疾病で手続きが困難な場合
  • DV被害により避難中で、住所を公にできない場合
  • 経済的困窮(生活保護受給など)で費用負担が困難な場合
  • 市町村合併など行政側の事情で住所表記が変更された場合

逆に、「忙しかった」「知らなかった」「面倒だった」といった理由は、正当な理由としては認められません。


負担軽減の切り札「スマート変更登記」とは

「いちいち2年ごとに申請なんて面倒…」という声に応えるため、法務局側が職権で登記を更新する新制度「スマート変更登記」が導入されます。これがうまく機能すれば、所有者は実質的に何もしなくても登記が最新化される仕組みです。

個人の場合:住基ネット連携の流れ

個人(国内に住所を有する自然人)の場合、「検索用情報の申出」を行うことで、将来の住所変更が自動的に登記に反映されるようになります。

手続きの流れ

  1. 氏名・住所・生年月日・メールアドレスなどを法務局に事前申出する(2025年4月21日より受付開始済み)
  2. 法務局が定期的に住基ネットを確認
  3. 住所変更を検知すると、本人に確認のメール等が届く
  4. 本人の同意を得たうえで、法務局が職権で変更登記を実施

最大のメリットは、登録免許税(通常は不動産1個につき1,000円)が非課税(無料)になる点です。仮に土地と建物を1つずつ所有していれば通常2,000円かかるところ、これがゼロになります。

ショウ先生
ショウ先生

「なお区分建物(マンションの一室など)をお持ちの場合は、「自分は建物しか持っていない」と思われるかもしれません。しかし、実は敷地(底地)の所有権を持っていることになっている物件がほとんどです(敷地権と言います)。」

法人の場合:商業登記との自動連携

法人の場合は、より簡便です。登記簿に「会社法人等番号」が記録されていれば、商業登記(本店移転や商号変更)が行われた瞬間に、不動産登記もシステム連携で自動更新されます。

しかも法人の場合は事前の意思確認すら不要で、もちろん登録免許税も非課税です。

スマート変更登記が使えないケース

便利な制度ですが、以下に該当する方は対象外となり、自ら2年以内に申請する必要があります。

  • 海外居住者:住基ネット照会ができないため
  • 会社法人等番号を持たない法人:外国法人や一部の特殊法人など

海外赴任中の方や、海外移住された方は特に注意が必要です。


見落とし注意:相続登記義務化との「ダブル義務化」

過料は最大15万円になる可能性も

実は、不動産登記をめぐる義務化は今回が初めてではありません。2024年(令和6年)4月から、すでに相続登記が義務化されています。

制度施行日期限過料の上限
相続登記義務化2024年4月1日取得を知った日から3年以内10万円以下
住所等変更登記義務化2026年4月1日変更日から2年以内5万円以下

両方を放置した場合、過料は単純合算で最大15万円にのぼる可能性があります。「親から相続した実家の登記をしていない」「親との共有で、自分も引っ越して登記簿の住所が古いまま」――こうした状態は、ダブルでリスクを抱えていることになります。

相続時の手続き簡素化メリット

スマート変更登記を活用して住所を常に最新化しておくと、将来の相続時に被相続人の住所変遷を証明する書類(住民票の除票や戸籍の附票)の収集負担が大きく軽減されます。これは、残された家族へのとても大きな贈り物にもなります。


自分で申請する場合の必要書類と注意点

スマート変更登記を使わず、従来どおり自分で住所変更登記を申請する場合は、以下の点に注意してください。

必要書類:住所の変遷をすべて証明する

「住民票の写し」または「戸籍の附票」が必要です。重要なのは、登記簿上の旧住所から現住所までの履歴の連続性を証明しなければならないという点です。

  • 転居回数が少ない:住民票の写しで対応可能
  • 転居回数が多い・他県に複数回引っ越している:戸籍の附票の取得が推奨

古い住所変更は要注意:書類が取れない可能性

住所変更から5年以上が経過していると、役所の保存期間が満了し、住民票の除票や戸籍の附票が取得できなくなる場合があります。こうなると、手続きは一気に複雑化し、追加の上申書や所有者確認資料が必要になることもあります。

「いつかやろう」と先延ばしにすればするほど、手続きの難易度が上がるのが住所変更登記の怖いところです。

ショウ先生
「複雑なケースは、法務局での登記相談を予約するか、司法書士に依頼をした方が良いと思います。」


海外居住者向けの追加ルール:「国内連絡先事項」の登記

2024年4月1日から、海外居住者(自然人・法人)を所有権の登記名義人とする登記の申請の際には、国内の連絡先となる者の氏名・住所等を「国内連絡先事項」として申請情報に提供することが必須となりました。

  • 役割:行政や第三者からの連絡ルートの確保(納税義務等は負わない)
  • 選定例:日本に住む親族、知人、不動産管理会社、司法書士などの専門家

海外不動産投資をしている方や、海外移住して日本に不動産を残している方は、すでにこの規制の対象になっている点を改めて確認しておきましょう。


今すぐ始めるべき4つの準備アクション

2026年4月の義務化、そして2028年3月の遡及適用期限に向けて、いま取り組むべきことを整理します。

1. 登記情報の現状確認

固定資産税の納税通知書や、法務局で取得できる登記事項証明書を確認し、登記簿上の住所・氏名が現在のものと一致しているかを照合してください。これが出発点です。

2. すでに不一致がある場合は早めに解消

施行前にすでに住所や氏名が変わっている方は、2028年3月の期限を待つ必要はありません。今のうちに変更登記を済ませるほうが、書類取得もスムーズで、過料リスクもなくなります。

3. スマート変更登記の「検索用情報の申出」を行う

2025年4月21日から受付が始まっている「検索用情報の申出」は、将来の住所変更時に自動・無料で登記が更新される極めて有用な制度です。引っ越し予定の有無にかかわらず、早めに申し出ておくことを強くおすすめします。

4. 複雑なケースは司法書士に相談

以下のいずれかに当てはまる方は、専門家(司法書士)への相談が効率的です。

  • 転居回数が多く住所履歴が複雑
  • 相続登記が未了の不動産を保有している
  • 共有名義の不動産がある
  • 海外に居住している、または海外不動産を保有している

複数の登記をまとめて依頼することで、トータルコストの削減や手続き漏れの防止にもつながります。


まとめ:「知らなかった」では済まされない時代へ

2026年4月の住所・氏名変更登記の義務化は、これまで「やっておけばよい」だった登記を「やらなければならない」ものに変える、極めて重要な法改正です。

ポイントを改めて整理します。

  • 2026年4月1日施行、変更から2年以内の申請が必須
  • 施行前の未登記分も2028年3月31日までに申請(遡及適用)
  • 怠ると5万円以下の過料(相続登記と合わせて最大15万円のリスク)
  • スマート変更登記を使えば、自動・無料で住所更新が可能
  • 検索用情報の申出は2025年4月21日から受付中

不動産は人生で最も大きな資産の一つです。「あとで」と放置しているうちに、書類が取れなくなり、過料が発生し、相続時に家族が困る――そんな事態を避けるためにも、まずは今日、ご自身の登記簿を一度チェックしてみてください。


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参考・出典

  • 法務省「住所等変更登記の義務化について」
  • 法務省「スマート変更登記のご利用方法」
  • 法務局「検索用情報の申出について」
  • 国土交通省「所有者不明土地の実態把握の状況について」
  • 政府広報オンライン「所有者不明土地」関連記事

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