【第1回】債権譲渡登記申請の方法【債権譲渡登記の基礎】

【第1回】債権譲渡登記申請の方法【債権譲渡登記の基礎】

目次

久しぶりの債権譲渡登記

司法書士・行政書士・土地家屋調査士の永田翔です。

10年以上前にやったきりの債権譲渡登記を久しぶりにやりました。
取引先にファクタリング事業をされている会社があるため、今後は頻繁に債権譲渡登記を申請することになりそうです。
自分用の備忘録を兼ねて、この記事を書いていこうと思います。

債権譲渡登記、申請の方法

まず債権譲渡登記の申請方法には、大きく分けて次の2つがあります。
1.書面申請(法務局に持ち込みまたは郵送)
2.オンライン申請

私としては、できれば2のオンライン申請で債権譲渡登記を申請したいところです。
最大の理由は、債権が二重に譲渡された場合には、先に対抗要件を備えた方が優先されるためです。
依頼主が債権を譲り受ける契約の場に立ち会ったのであれば、その場からオンラインで申請できればベストです。

しかし実務上、債権譲渡登記においてオンライン申請を利用することは、現実的ではありません。

なぜオンライン申請ができないのか?

なぜなら、債券譲渡登記をオンライン申請するためには、債権の譲受人と譲渡人の両方が電子証明書を持っていないといけないからです。

債権譲渡登記のオンライン申請を代理で行う場合、委任状に電子署名をしてもらわないといけません。
しかし電子証明書の発行を受けているという法人はほとんどありません。

国税庁の平成30年度会社標本調査によると、国内の法人の数は186万455社です。
これに対して平成30年度2月末時点で有効な、法人の電子証明書は29,151件。

https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/suishin/meeting/bukai/dai2/20180323/180323dai202.pdf
つまり電子証明書の発行を受けている法人は1.5%程度しか存在しないのです。

債権譲渡以外の登記では、オンライン申請がされているが

一方で不動産登記や商業登記では、オンライン登記が広く利用されています。
この事をご存知の方からすると「なぜ債権譲渡登記だけがオンライン申請できないのか?」と疑問に思われるかもしれません。

理由は「債権譲渡登記は即日処理がされるから」です。これだけでは少しわかりづらいかもしれません。

不動産登記や商業登記は、そもそも登記を申請しても即日処理されるわけではありません。
法務局がどの程度忙しいかによっても異なりますが、申請から1~2週間程度かかることが多いです。
書面申請であれば、法務局に申請書が提出された日を基準に、完了予定日が決まることになります。


オンライン申請の場合は、登記をオンラインで申請した後、原則2日以内に法務局に添付書類を提出すれば良いことになっています。
この提出方法は持参でも郵送でも問題ありません(オンライン上ですべてが解決するわけではないところから、半ライン申請などと呼んだりすることもあります。)。
添付書類が提出されれば、そこで初めて完了予定日が決まり、法務局での登記の審査も始まります。


もちろん不動産登記や商業登記でも、完全オンライン申請をすることは不可能ではありません。
しかし、これを実現するのであれば、前述の債権譲渡登記の場合と同様、電子証明書が必要になります。本人申請であれば申請書に電子署名をする必要があり、司法書士などの代理人による申請であれば委任状に電子署名をする必要があるのです。

債権譲渡登記との違い


話を債権譲渡登記に戻します。「債権譲渡登記は即日処理がされるから」電子証明書がないとオンライン申請できないと書きました。

つまり債権譲渡登記では半ライン申請が認められておらず、完全オンライン申請以外のオンライン申請はできないということになります(説明がわかりづらかったらすみません)。


書類や提供データに不備がなければ、その場で登記を完了させる。
不備があればその場で取下げをさせる。
これが債権譲渡登記の進め方となっているため、半ライン申請の「登記受付がされているが、添付書類が提出されていない状態」というのが、あってはならない(ありえない)わけです。

債権譲渡登記の具体的な申請方法

そうすると、冒頭で書いた、
1.書面申請
2.オンライン申請
のうち、実際には1の書面申請しかほぼできないということになります。


そしてこの書面申請に、さらに2種類の方法があります。
1つは通常の書面申請、もう一つは事前にオンライン上でXML形式申請データを提供する方法です。

いずれの場合も XML形式申請データ を提供するのですが、前者の場合はCD-Rにデータを入れたものを、紙の申請書とあわせて提出します。
後者の場合はまずオンラインで XML形式申請データ を提供します。そうするとQRコードや受付番号が記載された紙のプリントアウトができるようになります。この紙をCD-Rの代わりに提出します。

オススメの申請方法

私はこの事前にデータを提供する方式をオススメしたいと思います。
理由としては、単純にCD-Rにデータを入れる手間がかからないためです。


今回私は久しぶりの申請でしたので、事前にデータを送信した上で、窓口で書面申請を行いました。不備があった場合、取り下げることになるのですが、窓口に出向いていればその場で対応して再申請ができると考えたためです。


そしてプロとして非常に恥ずかしい話ではあるのですが、やはり1か所軽微な修正が必要となりました。
いかに軽微な修正であっても、債権譲渡登記においては「補正」というものが存在せず、一度取り下げての再申請となります。
そのため申請書とあわせて取下書を提出させることになっています。

この取下書がついていなければ、申請書の受付・審査をしてもらうことができません。
審査を始めてから不備が見つかれば、取下させるか却下をするしかありませんが、法務局はなるべく却下をしたがりません(理由は長くなるのでここでは解説を控えます。)。

そのため取下書をあわせて提出させ、不備が見つかった場合は、その取下書を以って取下の処理を行う。というわけですね。
実務的な手順については、また別の記事でご紹介させていただきたいと思います。


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