「合同会社って何?」「株式会社と何が違うの?」
そんなご質問をいただくことが、しばしばあります。
- 「取引相手が合同会社なんだけど、株式会社じゃないし何か怪しいんじゃないの?」
- 「合同会社を作るにはどうすれば良いの?」
- 「会社設立をしたいんだけど、株式会社とどっちが良いんだろう?」
実のところ、合同会社は株式会社とほとんど変わりません。
とはいえ、もちろん全く同じというわけでもないので、この記事ではその違いを解説していきたいと思います。
この記事を読めば、「合同会社と株式会社の違い」「合同会社設立登記をする方法」がわかります。
ちなみに一番よく訊かれるのは「合同会社の方が税金が得だったりしますか?」というものですが、税金はさすがに同じです。
そうでなければ、皆、合同会社の方を設立しますよね(笑)?
なお私は司法書士と行政書士の資格を持つ、会社・法人手続の専門家です。ショウ先生という名前でこのブログを運営していますが、本名は永田翔と申します。
会社設立登記の専門家は司法書士です。行政書士の先生も税理士の先生も、会社設立登記を申請することはできません!
事務所は神奈川県藤沢市、いわゆる湘南地域にありますが全国どちらでも対応可能です。
実際に北海道から沖縄県まで設立登記の申請をしたことがあります。
合同会社は株式会社と同じく、法人の一種です。
冒頭で書いたとおり、ほとんど株式会社と同じですが、違う点を解説していきたいと思います。
目次
その前に……会社ってなに?
合同会社も株式会社も「会社」という言葉が入っていますよね。
それでは「会社」っていったいなんなのでしょう?
なお「そんなのわかってるよー」という方は次の項目まで読み飛ばしてください(笑)。
少し言葉が難しいかもしれませんが、「営利社団法人」=「営利を目的とした社団法人」なんて言ったりします。
これだけだとわかりづらいと思うので、これから説明していきますねー。
「営利社団法人」を「営利」「社団」「法人」に分解して説明していきます。
説明の都合上、
- 法人とは
- 社団とは
- 営利とは
の順で説明をしていきます!
法人とは
法人というのは、法によって人と同じように「権利」や「義務」を持つことを認められたものです。
ちなみに私や貴方のような、人間のことは法律用語では「自然人」と言ったりします。
我々は法によらずとも、自然に「権利」や「義務」を有するわけですね。
社団とは
人の集まりが「社団」です。これに対して「財団」というものもあります。
一般社団法人とか一般財団法人なんて言葉を見たことはありませんか?
人の集まりに法人格を与えたものが「社団法人」
財物の集まりに法人格を与えたものが「財団法人」
営利とは
営利というのは平たくいうと「お金儲け」のことです。
例えば株式会社であれば、利益を出して株主に分配することを目的としていますよね。
会社がボランティアをしても良いけど、ボランティア活動”だけ”をしている法人は会社ではありません!
まとめると
会社とは営利社団法人ですので、「お金儲けをすることを目的に、人が集まった団体に、法が人格を認めたもの」となります。
なんとなくイメージはわきましたか?
取引相手が合同会社
「取引することになった会社が、合同会社なんです。株式会社じゃないし、合同会社って怪しくないですか?」こんなご質問をいただくことがあります。
結論としては合同会社だからといって怪しいということは全くありません。
株式会社だからといって安心なわけでもありません。まともな合同会社もあれば、怪しい株式会社もあります(笑)。
ちなみに皆さんよくご存知のはずのAmazon。
あのAmazonの日本法人はアマゾンジャパン合同会社。そう「合同会社」なんですよー。
合同会社を選択する理由は「米国の税制上、節税になるためではないか」と言われているようです。
税務関係は専門分野ではないので、詳細を書くことは致しませんが、Web上で参考になるページもありましたので2つほど紹介させていただきます。
森信 茂樹さんがプレジデントオンラインに書かれた記事
※リンク先の記事について、私が内容の正しさを保証するものではありません。
なお当記事の掲載当初の内容には、不正確な内容が含まれていたと思われるため、該当部分を削除いたしました。
代わりに専門家の方が書いた記事にリンクを貼らせていただきました。
結論:合同会社は別に怪しくない
合同会社を作るにはどうすればいいの?
用意するものは次のとおり。
- 代表者になる方の印鑑証明書
- 資本金相当額を入金した個人の通帳
- 会社実印として届出する印鑑
- 社員(株式会社でいう株主)の印鑑
ご自身で登記をしようという方は、法務局のひな形を活用すると良いでしょう。
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001252889.pdf
急ぎの方は、当ブログのこちらの記事もご参照ください。
会社設立について、ご質問・ご依頼の方はお問い合わせページや、記事のコメント欄からお願いいたします。
結論:合同会社を作るには、司法書士に依頼をするか、自分で法務局で手続しましょう。
設立するなら株式会社と合同会社、どっちが良い?
合同会社は株式会社と何が違うのかを説明していきます。
冒頭でも書いたとおり、一番よく訊かれるのは、「合同会社の方が税金は得ですか?」というものですが、税金は変わりません。
合同会社と株式会社で違う点のうち、多くの方が気にされる点を書いていきたいと思います。
- 設立にかかる費用が違う
- 株主と社員
- 名前が違う
- 役員の役職名も違う
- ランニングコスト:役員重任登記
- ランニングコスト:決算公告
- 利益の配分
先に比較表を貼っておきますね。
1.設立にかかる費用が違う
株式会社は実費が約20万円ほどかかります。これに対して合同会社は約6万円でできます。
司法書士に設立登記を依頼する場合、その報酬は別途かかります。
当事務所では株式会社が約10万円、合同会社が約8万円です。
2.株主と社員
株式会社には、会社の所有者である株主がいますね。
合同会社では、株主の代わりに「社員」がいます。
日常では「社員」というと「従業員」のイメージですが、法律用語では「株主」などが「社員」です。従業員のことは「使用人」なんて呼び方をしますね。
使用人だなんて、昔の映画・ドラマに出てくるお屋敷みたいなイメージ……
会社で何かを決議するとき、株式会社の株主は1株あたり1票を持っています。
合同会社の社員は1人あたり1票を持っています。これは出資額に関係なく1人1票です。
1人で会社を作るならどちらでも同じですが、複数名で作る場合は注意が必要ですね。
3.名前が違う
当たり前ですが、会社の商号つまり名前が当然異なってきます。
「合同会社」と「株式会社」では名前が違いますね。
気にする方が多いか少ないかはわかりませんし、合同会社という名称も徐々に浸透してきてはいると思います。
それでもたまに「合同会社って怪しいの?」とご質問いただくことはあります。
また古い会社さんなどで、社内のマニュアル上「株式会社としか契約できないことになっている」と言う話も一度だけ聞いたことがあります。
規模の大きい会社では、マニュアルを変更するのも一苦労なのでしょうか
4.役員の役職名も違う
株式会社の場合、役員は取締役・代表取締役ですね。
合同会社の場合、役員は業務執行社員・代表社員です。
合同会社の経営者であれば、名刺にも代表社員と書くことが一般的です。
ちなみに合同会社であっても「社長」と名乗ることはできます。
「社長」は法律用語ではないので、会社の代表者であれば、社長と名乗っていただいてもおかしくないとは思います。
もちろん名刺に書いていただいてもかまいません。
「合同会社永田事務所 代表社員社長 永田翔」どうでしょう。やっぱり「代表取締役社長」と名乗りたいですか?
ランニングコスト:役員重任登記
株式会社の場合、役員の任期は最長で10年となっています。
そのため、例え構成メンバーが変わらないとしても、任期が過ぎたらもう一度同じ人を選び直す必要があります。これを「重任」と言います。
この「重任」の際にも、法務局で役員変更登記をしないといけません。
役員変更登記をするには、実費だけでも1万円から3万円かかります(資本金が1億円以下の会社であれば1万円、資本金が1億円を超える会社であれば3万円)。
司法書士に依頼をするのであれば、報酬は別途かかります。
当事務所では約3万円の報酬を頂戴しております。
これに対して合同会社には、役員の任期がありません。
そのため、株式会社とは異なり構成メンバーが変わらなければ、役員変更登記の必要がないのです。
ランニングコスト:決算公告
株式会社には決算公告の義務があります。
決算を官報などに掲載しないといけないのです。
官報というのは国が発行する新聞のようなものです。
仮にこの官報で決算公告をするのであれば、約7万円ほどかかります。
これに対して合同会社では決算公告の義務はありません。
しかしながら、実際のところ中小企業のほとんどは決算公告を行っていないと思います。
罰則の規定はありますが、「決算公告を行っていないこと」を理由に罰則を受けたという話を聞いたことがありません。
そのためこれについては、事実上、株式会社も合同会社も変わらないと言って良いのかもしれません。
上場企業などにお勤めの方以外であれば、ご自身の勤務先や取引先が、決算公告をしていないことも珍しくないと思います。
利益の配分
会社の最終目的は、社員(株式会社であれば株主)に利益を分配することだと言われています。
株式会社の場合は、原則として株を持っている数に応じて利益を分配しないといけません。
これに対して合同会社の場合は、利益の分配方法を自由に決めることができます。
ちなみに利益の分配というのは、株式投資をしている際の「配当」のようなもので、役員報酬とはまた別です。
当然、役員報酬は利益分配とは別に決めます。
まとめ
もう一度、先ほどの比較表を掲載しておきます。
結論:早くて安く作れるのが合同会社。それ以外の違いも見て、どちらが良いか考えてみましょう。
ちなみに合同会社を設立した後で、株式会社に変更することもできます。そのときはまた別に手間と費用がかかりますけどね。
でも実は実費だけで比較すると、最初から株式会社を作るよりも安かったりします。
いただいた質問:法人を合同会社の役員にできる?
はい。合同会社は社員には、法人もなることができます。
ただし法人が社員になる場合、その職務を執行する人を決めないといけません。
職務執行者と言います(そのまんまですね)。
契約書などに書く際は「代表社員 株式会社田中 職務執行者 田中一郎」といった記載になります。
この職務執行者は、社員となった法人の役員や従業員以外の人でもかまいません。
いただいた質問:合同会社の社員は全員登記されるの?
されません。
業務執行社員が登記されます。そのため業務を執行しない社員(株式会社でいう株主)がいれば、その方のお名前は登記する必要がありません。
こちらの記事でも解説しております。
いただいた質問:合同会社の役員は1円も出資していなくてもなれる?
なれません。こちらも上記の記事でも解説しております。
「株式会社との違い」では取り上げていませんが、これも実は大きな違いかもしれません。
(今までに一度しか訊かれたことがなく、あまりニーズがないと思ったので、こちらで取り上げました)。
株式会社について「所有と経営の分離」という表現があります。
合同会社は、株式会社に例えると「必ず株主の中から役員を選ぶ」というルールになっています。
そのため完全には所有と経営の分離ができないわけですね。
とはいえ1円でも出資していれば社員なので、役員になることができます。
しかし合同会社は、決議の際に1人1票になるので、1円しか出してない人も1票持っていることになります。
ここが機関設計の難しいところかもしれませんね!
まとめ
冒頭で書いた、こちらの質問に対して、あらためて回答していきます。
- 「取引相手が合同会社なんだけど、株式会社じゃないし何か怪しいんじゃないの?」
→合同会社だかといって怪しいわけではありません。 - 「合同会社を作るにはどうすれば良いの?」
→司法書士に依頼をするか、自分で書類を揃えて法務局で相談してください。 - 「会社設立をしたいんだけど、株式会社とどっちが良いんだろう?」
→上に掲載した比較表などを元にご検討ください。費用が安いのは合同会社。
その他の違いなどについては、本文をお読みいただけましたら幸いです。
本文を読んでも解決しない疑問は、お気軽にご質問ください!
いかがだったでしょうか
今日は合同会社について、主に株式会社との比較をしながら解説していきました。
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ショウ先生こと永田翔でした。