「会社の定款がないんだけどどうしたら良いの?」「定款ってどうやって変更や訂正をするの?」こんな質問をいただくことがあります。
そもそも定款変更は誰に頼めばいいのでしょうか。弁護士?税理士?
※ちなみに定款というのは、会社などのすべての法人が作成することになっている、「会社の法律関係のルールブックのようなもの」です。
正解は、弁護士・司法書士・行政書士のいずれかであれば大丈夫です。
ただし登記手続がからむものは司法書士に依頼することをオススメします。
定款変更をした後、登記が必要な場合とそうでない場合があります。
登記が必要な場合は、ご自身でできそうになければ司法書士に依頼をしましょう。
どのような変更の場合に登記が必要になるのかについても、この後、表を使って説明していきます。
また事業目的の変更をする際に、許可・認可が必要な業務であれば、行政書士や社会保険労務士の知識が必要となります。
建設業や宅建業の許認可は行政書士の仕事です。
しかし介護事業や労働者派遣事業の許認可は社会保険労務士の仕事となります。
そもそもこれから行う予定の業務について、許可や認可が必要なものかがわからないという方もいらっしゃるでしょう。
許可や認可が必要なことはわかるとしても、それをどの専門家に頼むべきかがわからないこともあるはずです。
行政書士と社会保険労務士の両方が関わる業務なんてものもあるのです(例:介護タクシー)。
この記事を読むと、こんなことがわかります。
- 定款の変更・訂正にはどのぐらい費用がかかるの?
- 価格を抑える方法はあるの?
- 変更・訂正をする方法は?
- 何が(どんな書類が)必要になるの?
- 定款変更に義務はあるの?
- どのような点に気をつければ良い?
なお、私は司法書士と行政書士の両方の資格を持つ、会社・法人手続の専門家です。
ショウ先生という名前でこのブログを運営していますが、本名は永田翔と申します。
会社に関する登記の専門家は司法書士です。
また許認可手続の専門家は行政書士です。
事務所は神奈川県藤沢市、いわゆる湘南地域にありますが全国どちらでも対応可能です。
実際に北海道から沖縄県まで設立登記の申請をしたことがあります。
ご依頼・ご相談はこの記事のコメント欄やお問い合わせページから、お気軽にどうぞ。
目次
定款変更の費用はどれぐらいかかる?
司法書士や行政書士の報酬は事務所ごとに異なるので、「依頼する先と内容によります」という話になります。
しかしそれでは身も蓋もないので、「当事務所にご依頼いただいた場合」と「ご自身でされた場合」に分けて、内容ごとに費用の目安を紹介させていただきたいと思います。
なお当事務所は安さを売りにしているわけではありません。
報酬額は、相場ぐらいの費用だと思ってください。
定款変更の内容 | 自分で手続をする場合にかかる費用(法務局に納める登録免許税) ※解散・清算の場合は官報公告の費用も計上しております。 | 当事務所にご依頼をいただいた場合の費用 |
商号(会社の名前)変更 | 30,000円 | 57,500円 ※報酬25,000円(税別)と左の実費の合計 |
事業目的(業務内用)変更 | 30,000円 ※許可や認可が必要な業務内容であれば、事業内容によって別途費用がかかります。 | 57,500円 ※報酬25,000円(税別)と左の実費の合計 ※許可や認可が必要な業務内容であれば、事業内容によってべと費用がかかります。 |
本店変更(住所の変更) | 30,000円 (ただし管轄法務局が変わる場合は60,000円) | 57,500円 ※報酬25,000円(税別)と左の実費の合計 (ただし管轄法務局が変わる場合は115,000円) |
役員変更 | 10,000円 (ただし資本金が1億円を超える会社は30,000円) ※定款変更を要する場合は追加で30,000円 つまり10,000円/30,000円/40,000円/70,000円のいずれかがかかります。 | 37,500円~114,000円 ※報酬25,000円(税別)と左の実費の合計 (ただし定款変更を要する場合は報酬40,000円) |
役員の任期の変更 | 0円 ※登記事項ではないので、登記手続が不要です。 そのため登録免許税がかかりません。 | 19,800円(税別) |
増資(資本金の増加) | 増加する資本金の0.7%(計算結果が30,000円未満であれば30,000円) ※定款変更を要する場合は追加で30,000円 つまり30,000円/60,000円のいずれかがかかります(増加する資本金が430万円以上の場合は超える部分につき0.7%をかけた金額がかかります) | 77,000円~11,5000円 ※報酬40,000円(税別)と左の実費の合計 (ただし定款変更を要する場合は報酬50,000円) 増加する資本金が430万円以上の場合は免許税等別途お見積もり |
決算期の変更 | 0円 ※登記事項ではないので、登記手続が不要です。 そのため登録免許税がかかりません。 | 19,800円(税別) |
解散・清算(会社をなくす) | 81,000円程度 ※登録免許税の41000円は固定ですが、官報公告の費用は文字数により若干変わるため40,000円程度となります。 | 169,000円程度 ※報酬80,000円(税別)と左の実費の合計 |
許認可やそれに関わる届出等が必要となる場合、別途行政書士等の費用がかかります。
費用を抑えるには、法務局のWebサイトを見て、自分で手続しましょう。
上に価格の参考表を書いておきましたが、自分で手続をすれば実費(登録免許税)だけで済みます。
定款を変更した場合、それが会社の登記簿に記載されることであれば、登記手続をする義務があります。
仮に登記手続をしないで放置していた場合、過料(前科がつかない罰金のようなもの)を支払うことになる可能性があります。※原則として、変更から2週間以内に手続をする義務があります。
またご自身の会社の管轄法務局は、下記のサイトでご確認ください。
管轄のご案内:法務局
法務局で予約をすれば、窓口で質問・相談をすることもできますが、上記サイトを見てご自身で手続をすることが難しそうだと感じたら、司法書士に依頼されることをオススメいたします。
定款の変更・修正をする方法
定款の内容を変えるには、株式会社の場合は株主総会・合同会社などの場合は社員総会を開く必要があります。
そのため書類としては株主総会議事録・社員総会議事録を作成することになります。
ちなみに合同会社などの持分会社の「社員」というのは、株式会社の「株主」と同じような立場になります。
「会社員」や「従業員」のことではありません。
法律上は「会社員」「従業員」のことは「使用人」などと表現します。
単純に書き間違えただけという話であれば、会社実印を訂正印として押し、訂正すれば問題ないと思います。
議事録をご自身で作成されるようであれば、議事録のひな形も法務局のWebサイトにあるものが参考になると思います。
専門家に依頼される場合は、行政書士や司法書士の業務となります。
ただし、定款の変更・修正を行った点が、会社の登記簿に記載されることであれば、司法書士に依頼することをオススメいたします。
法律上、行政書士は登記手続の依頼を受けることはできないのです。
登記事項にあたるもの | 登記事項の変更にあたらないもの |
・商号(会社の名前) ・事業目的(業務内容) ・本店(会社の住所) ・役員 ・資本金 ・発行株式数 ・解散や清算(会社をなくす) | ・役員の任期 ・株主 ※新株発行は登記が必要 ※株式譲渡は登記が不要 ・決算期 |
上記の表を見て、左側に記載されていることを変更する場合は、司法書士に依頼しましょう。
余談ですが、司法書士ではない方が書いたと思われるサイトで「人事異動や辞任・退任などによって取締役・監査役が変わった際も定款の変更が必要となります。」という記載がありました。
しかしこの情報は正確ではなく、「役員の任期や定員に変更があった場合」「監査役が1人もいなかった会社が監査役を置く場合」「これまで監査役がいた会社が、監査役を置かなくなる場合」といった事情がなく、役員を変更するだけであれば、定款の変更は不要です。
餅は餅屋と言います。
Webサイトも資格を持った専門家が書いたものかどうか、気を付けて見ないといけませんね。
なお、会社設立時は公証役場という場所で、公証人から定款の認証を受けるという手続があります。
しかしこれは設立の話であり、定款の変更・修正をした場合であっても、公証役場での手続は不要です。
登記関係では次の記事もよくお読みいただいております。
許可や認可が必要な事業目的の変更の場合は、行政書士や社会保険労務士にも相談
事業目的(業務内容)の変更や追加についての専門家は司法書士です。
しかし、その業務に許可や認可が必要な場合は、行政書士・社会保険労務士の協力も必要です。
一般的には許認可業務は行政書士の専門分野ですが、介護関係・労働者派遣事業などは社会保険労務士の専門分野となります。
国や都道府県から許可や認可を受けるために、事業目的の記載方法が厳密に定められている場合もあります。
依頼する司法書士自身が許可・認可に詳しいか、行政書士・社会保険労務士と連携を取っていれば問題ありません。
そうでない場合は、登記手続をした後で、許可や認可に支障が出ることがあります。
私は司法書士・行政書士の両方の資格を持っているので、建設業・風営法などの手続は対応できます。
また介護事業・労働者派遣事業などに詳しい社労士とも連携しておりますのでご安心ください。
登記事項の変更をした場合、手続をする義務があります。
登記簿(登記事項証明書)に記載される点につき、定款の変更・修正を行った場合は、法務局での登記手続をしないといけません。
これをしないと過料というお金を払わないといけなくなります。
過料というのは、前科がつかない罰金のようなものだと思ってください。
原則として、変更があった日から2週間以内に登記をしないと、過料の制裁を受けることになっています。
しかし私の経験則上は、半年から1年以上に渡って登記を放置していたのでなければ、過料の通知は来ていません。
当然ながら「半年までなら放置しても大丈夫ですよ」とお約束するものではありません(笑)。
参考までに定款の記載事項のうち、登記事項にあたるもの・登記事項にあたらないものの表を再度掲載いたします。
登記事項にあたるもの | 登記事項の変更にあたらないもの |
・商号(会社の名前) ・事業目的(業務内容) ・本店(会社の住所) ・役員 ・資本金 ・発行株式数 ・解散や清算(会社をなくす) | ・役員の任期 ・株主 ※新株発行は登記が必要 ※株式譲渡は登記が不要 ・決算期 |
この表の左側に書かれたことを変更した場合は、速やかに法務局で手続をしましょう。
ご自身で手続をしたいという方は、法務局のWebサイトを参考にしてください。
これを見て、自分での手続は難しそうということであれば、お早めに司法書士に依頼・相談されることをオススメいたします。
番外編:定款がない場合は作り直すことができる
会社設立時には必ず定款を作成しているはずですが、普段使うものではないので、紙やデータを紛失して定款が見当たらないというケースも少なくありません。
銀行などから融資を受ける場合に、金融機関に提出を求められる。許可・認可の手続をする際に国や県などに提出を求められる。
そういった場合でもなければ、定款を使う場面はないでしょう。
そのため税理士さんや金融機関の担当者から「お客様で定款がないという会社があるのですが……」とご相談をいただくことが多いです。
設立から20年以内であれば、公証役場で設立当初の定款は確認できる。
会社などの法人設立時には、公証役場にて定款認証という手続をする必要があります(合同会社・合名会社・合資会社といった持分会社を除きます)。
この公証役場では、認証後20年間は定款のデータを保存してくれています。
通常は認証後すぐに設立手続をすることが多いので、設立から約20年の間であれば、定款の写しを請求することができます。
費用は1ページあたり250円ですので、一般的なページ数の定款であれば数千円程度で発行を受けられます。
ただし、発行を受けられるのは、原始定款。つまり設立当初の定款だけです。
定款の変更・修正を行った場合にまで、公証役場で認証を行うわけではありません。
そのため、設立以降に何かしらの変更・修正を行った場合、そのことについてまでは公証役場ではわかりません。
公証役場で写しを請求したとしても、設立当初の定款の内容しかわからないということには注意が必要です。
設立後に定款変更をしている場合、設立から20年経っている場合は定款を作り直す
定款の記載事項の多くは、法務局で取得できる会社の登記簿(登記事項証明書)に記載されています。
そのため、私が「会社の定款がない」という相談を受けた場合、この登記事項証明書を取得して、それと矛盾がないように定款を作成しております。
決算期など、登記事項以外にも定款に記載するべきことはあります。
それについてはご依頼者様や顧問税理士の先生に確認させていただいております。
もちろん一字一句、元の定款と全く同じ内容で作成することは、私を含めて誰にもできないでしょう。
しかし登記簿(登記事項証明書)の記載と一致していれば、まず問題はありません。
定款は設立後も内容を変更できるものですし、設立当初の定款の内容が誰にもわからなくなった以上、間違いを指摘できる人もどこにもいないのです。
多くの会社・法人から、定款がないという相談を受けて対応してきました。
今まで提出先から何か言われたという報告は、一度も受けておりません!
まとめ
- 定款を変更した際、登記事項証明書の記載事項であれば、登録免許税がかかる
- 登記手続をするのは管轄法務局 管轄のご案内:法務局
- 依頼をするなら司法書士か行政書士、ただし登記が必要な場合は司法書士に依頼すべき
- ただし許認可が関係する場合は、行政書士・社会保険労務士にも相談が必要
- 行政書士や社会保険労務士の資格も持っている司法書士に頼めば、より安心
- 登記をしないで放置をすると、過料(前科がつかない罰金)を支払わなくてはいけなくなる
- 定款がなくなっても作り直すことはできる
私は司法書士と行政書士の両方の資格を持っているので、登記手続も許認可もご相談いただけます。
お役に立てそうでしたらお気軽にご連絡ください。
「定款の変更・訂正に費用はいくらぐらいかかる」の記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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